中国の民族抑圧示すウイグル族学者への不当判決
中国新疆ウイグル自治区の抱える問題をインターネットなどで訴え、国家分裂罪で無期懲役判決を受けたウイグル族学者、イリハム・トフティ氏に対する二審判決公判が開かれた。同自治区高級人民法院(高裁)は上訴を退け、一審判決を支持する判決を下した。
二審で無期懲役が確定
中国は二審制のため刑が確定した。人権や言論の自由を侵害し、少数民族の抑圧につながりかねない不当な判決だ。
イリハム氏は今年1月に拘束された。同自治区ウルムチ市公安局は「ネットを通じて『新疆独立』を宣伝するとともに、教師の身分を利用して『政府転覆』を扇動し、分裂活動に従事した」としている。しかし、イリハム氏はウイグル族の人権擁護に向けて積極的な発言を続ける一方、国家分裂につながる独立運動には反対してきた。
ウイグルでは最大3000人が死亡したとも言われる2009年7月のウルムチ騒乱以降、ウイグル族と漢族の間の矛盾が拡大し、憎悪が深まった。イリハム氏はサイトなどを通じ新疆の矛盾を発信し続け、両民族間の「橋渡し役」を務めた数少ない理性派知識人だった。
中国は近年「人治」から「法治」への転換を掲げ、法制度の整備を進めている。ただ、法律の解釈権は政府・共産党にあるため、司法の独立など西側諸国の憲法に基づく法治とは異なり、共産党支配の強化という性格が強い。10月の共産党第18期中央委員会第4回総会(4中総会)では「中国式法治」の堅持を弁護士に求めるなど、共産党支配を揺るがしかねない人権派や民主派勢力への統制を強める方針が明確になった。
共産党指導部がイリハム氏に重罪判決を下したのは、党・政府のウイグル政策を批判する言論を「法」の名の下で抑圧する狙いがあるとみられる。親族によれば、イリハム氏は「判決は不公正であり、事実を解明していない。法律を踏みにじっている」と批判した。当然だ。
公判の進め方にも問題があった。イリハム氏の弁護士2人は判決公判の期日通知が直前だったため、出廷できなかった。また、法院ではなく拘置所で判決言い渡しが行われたほか、二審の審理は開廷されずに書面で済まされた。法廷で多くの人にイリハム氏の主張が伝わることを恐れたのだろう。
米国務省のラスキ報道部長は、イリハム氏の判決確定について「深く失望している」と表明。「イリハム氏の拘束は、ウイグル族の重要な声を封じ込めるものだ」と批判し、釈放を要求した。自由、基本的人権の尊重、法の支配は国際社会における普遍的な価値だ。中国政府は海外からの指摘を重く受け止める必要がある。
独自の文化尊重せよ
最近、中国当局が「ウイグル族によるテロ」と断定する暴力事件が急増し、反テロ政策の結果、長いひげやスカーフの制限などウイグル族の宗教文化への抑圧が強化されている。もちろんテロは決して許されないが、締め付けはウイグル族の不満を強めるだけだ。中国政府は少数民族の独自の文化を尊重する政策を進めなければならない。
(11月23日付社説)