民主派は持久戦の戦略転換を

香港誌「前哨」編集長 劉達文氏に聞く(中)

300 ――学生を中心とする今回の占拠デモは天安門事件で鎮圧された学生たちを支援する香港での民主化運動とどのような関わりがあるか。

 香港は英領時代の1989年、北京で天安門事件が発生すると、中国の民主化を求める学生たちを支援する運動が支連会(香港市民支援愛国民主運動連合会)を通し、香港大学や香港中文大学などの学生団体も協力してきた。

 7月から始まった香港の金融街・中環(セントラル)を平和裏に占拠して真の普通選挙改革を求めるオキュパイ・セントラル(和平占領中環)運動は、昨年3月、香港大学の戴耀廷副教授、香港中文大学の陳健民副教授、朱耀明牧師の3人が発起人となって結成され、香港の学生団体である香港大学生連合会(学連)、学民思潮なども加わり、準備が進められていった。

 支連会の故・司徒華主席(当時)を中心に天安門事件で弾圧された中国の学生を自発的に保護・支援する黄雀行動(民主化学生たちを中国内から西側諸国へ避難させる秘密組織)では朱耀明牧師は一番長く堅持した人物だ。学連や学民思潮も天安門事件で弾圧された中国の学生を支援するために発足した中国の民主化を求める学生団体だ。

800

香港の九竜半島にある繁華街・旺角(モンコック)のデモエリア。疲れがたまる人も

 ――占拠デモを行っている学生団体、オキュパイ・セントラル運動の発起人3人、自主的に占拠している市民らで意思疎通や共闘はできるものなのか。

 学生団体とオキュパイ・セントラルの発起人たちは考え方や経験、思想背景が違うのでまとまるのは難しい。オキュパイ・セントラルの発起人らは大学副教授として大学の授業にもどり、学生らを後方支援する意向。民主派を支持するカトリック香港教区の陳日君枢機卿は学生たちは自宅へ帰れと理性的に主張している。民主派の香港紙「蘋果(りんご)日報」オーナーの黎智英ネクストメディア会長も早期解決を望んでいる。

 これに対し、学生団体代表は授業ボイコットしながら政府対話をロマンチックに理想化し、占拠を続ける。香港政府としては学連のみと対話する動きになり、繁華街・旺角(モンコック)では学生団体のコントロールも利かない急進派のデモ活動と化している。

 ――占拠デモは警官隊の強制排除が始まり、今後、どんな展開になると見通すか。

 何事も必ず終わる時が来るが、香港政府もデモ隊側も、ある段階までは持久戦が続くとみている。兵法の見方では学生側が幹線道路を占拠して居座るだけでは心身共に疲労困憊(こんぱい)するだけで一般市民はいずれ退却してしまう。中国政府は外国勢力の関与を批判しているが、それだけの資金が投じられたとしても、持久戦ではジリ貧状態になる。時間が経過するほどデモに反対する世論が高まってきているので戦略を変えていく必要があるだろう。

 ――ポルトガル領から中国に返還されたマカオは今年12月で返還15周年を迎える。香港の占拠デモがマカオに及ぼす影響はあるか。

 アジアの金融センターである香港と比べ、マカオは観光やカジノによる単一産業で発展しており、従来から中国の政治的影響力が強いので混乱することなく、比較的に穏便に普通選挙改革についても中央政府の意向に従う形で進んでいる。

(聞き手・深川耕治、写真も)