ラオス第4メコン橋 タイと中国結ぶ流通回廊へ
新グレートゲーム 第2部
幻想だった中国の平和的台頭(2)
節はずれの雨が、ピアノの鍵盤を打つように、タマリンドの小さな葉を揺らしている。
昨年12月、メコン川をはさんでタイのチェンコーンとラオスのフアイサイを結ぶメコン第4橋は完成した。この橋ができたことでビエンチャンを経由せず、雲南省昆明からダイレクトにバンコクまでつながる流通回廊が完成したことになる。
タイの少数民族がカゴを背負って歩く片道一車線のチェンコーンの県道を、中国雲南省の貿易公司の大型トラック22輪車が走り抜ける。
これまで雲南省の景洪(ジンホン)からメコン川を下って、タイのチェンセーンまでの船便が主流の交易回廊だったのが、陸路でつながったことで、雲南省からラオスを経由して一気にタイに入ることが可能になった。
橋のたもとに集積する50台ほどの大型トラックは、約半分はガソリンや石油を積んだタンク車だ。ラオスに輸出するためのものではなく雲南省へ持ち込まれる。雲南省とすれば、沿岸部から運び込むよりよほど廉価に運送費を抑えることができるメリットがある。
橋の建設費45億円は、中国とタイが折半した。基礎インフラが整備されることで恩恵を受ける両者が資金を捻出したのだ。ラオスはあくまで貸座敷の立場だ。
午後5時すぎ、橋を渡った。橋を往来する専用バス代金が20バーツ(1バーツ約3・1円)、イミグレに時間外料金40バーツを払う。
橋を歩いて渡りたかったが、イミグレの係官から「今年は異常に寒い。橋を渡る途中でメコン川に身を投げ出さないようにバスでの移動を薦める」とやんわり断られた。陸上部の道路を含め4㌔ほどある橋に歩行者道路はない。
中国のチベットに源流を持つメコン川の水の色が赤味噌のように濃く濁り、異例な乾期の雨で川の流れも多少早く感じる。
ラオス側イミグレは銀色に輝いている。その上の丘には全面金ピカのホテルが運営されている。スタンダードツインの部屋で一泊3500バーツ(約1万1000円)のホテルだ。ビエンチャンの黄金仏塔タート・ルアンの影響だろう。ラオスの紙幣にも描かれているタート・ルアンは、ラオス人のナショナリズムをも高揚させる美意識をも育てている。
ラオス側の橋周辺は、政府挙げて大開発の最中だ。メコン川に夕日が落ちる午後6時には、一仕事を終えたタイ人労働者が20人ばかりタイから迎えに来る小舟を待って岸辺に立っていた。ラオス側には建築資材も熟練労働者にも欠けることから、タイの人材と資材に依存せざるを得ない。
タイ人労働者らは毎日、メコン川を渡って国境越えの労働に従事している。彼らは、いちいちイミグレを通過するようなことはしない。タイとラオスの国境であるメコン川も、彼らにとっては生活の川でしかない。
(池永達夫、写真も)






