ウズベキスタン経済特区 中央ユーラシアの工場目指す

中央アジア胎動 中国「新シルクロード」と日本の戦略(8)

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ジザク自由産業特区内の中国との合弁でねじ釘を製造する工場

 中央アジアの国で、産業の多角化に最も力を入れているのがウズベキスタンである。この国も天然ガスやウランなど地下資源が豊かで、金の生産量は世界第7位だ。とはいえ、カザフスタンほどは恵まれてはいない。

 その代わり中央アジア最大の3000万人の人口と、世界文化遺産の古都サマルカンド、ブハラなど伝統文化や観光資源に恵まれている。国民の大半はスンニ派の穏健なイスラム教徒。教育のレベルも高い。

  独立後、社会主義体制から市場経済へ漸進的に移行が進められてきた。そして現在、産業構造の転換が急ピッチに進められている。国内総生産(GDP)の内訳も2000年に農業30%、第2次産業14・2%、サービス業37%だったのが、14年には、農業17%、第2次産業29%、サービス業54%に変化、第1次産業から第2次、第3次産業へ大きくシフトしている。

 その流れの中で、経済成長率はここ6年ほど8%台の高さを維持している。

  対外経済関係投資貿易省のラズィズ・クルラトフ局長は、「わが国は、中央アジアで産業の多角化に最も力を入れている。自動車や農業機械、繊維製品、建材、電気製品、化学製品などさまざまなものを国内で生産している」と胸を張る。実際、多様な産業の育成には目を見張るものがある。

 そのために同国政府は、外国からの資本や技術の導入に力を入れている。その受け皿として、ナヴォイ自由産業経済特区、ジザク自由産業特区、アングレン自由産業特区の3つの経済特区を設置した。ナヴォイ特区560㌶、ジザク特区430㌶の広大な土地が用意され、電気、ガス、水道や輸送手段などのインフラが整備されている。国外からの参加企業は、一定期間の税の免除・優遇などさまざまな特典を受けることができる。

 その内のジザク、アングレン両自由産業特区を訪ねた。ジザクは、トルコ企業の技術を使ったポリプロピレン製のパイプ工場、ねじ釘製造工場、ミシン組み立て工場など、中国との合弁企業が多い。

 首都タシケントから東南へ約80㌔のアングレンは、ソ連時代に工場があった。来年にはフェルガナ盆地とも鉄道がつながる。2013年8月に経済特区の設置が決まり、産業用のインフラが整備された。現在9つの工場が操業しているが、さらに10のプロジェクトが今年中にスタートする。操業する工場の種類は、食料品、建築資材、LEDランプ、セラミックなど実に多様。中国の銀行から融資を受けた国内企業による自動車のタイヤ製造も近々始まる。

 国外からの参加企業は、イギリス、イタリアなど西欧の国を含む6カ国。今のところ日本企業の参加はない。

 「われわれが必要としているのは、資金よりもマネジメントのスキル、高度な技術、ブランドだ。そういう企業が来てくれることを望んでいる。日本は、世界の先端技術をリードする国だ。今年2月には、東京でプレゼンテーションを行った。経済特区に参加する日本企業が現れることを期待している」とクルラトフ局長は語る。

 ユーラシア大陸の中央に位置するウズベキスタンは、海に出るまでに二つの国境を越えなければならない、“二重内陸国”である。海から遠いことは、製品、原料の輸送コストが掛かり、貿易には不利だ。しかし、ユーラシア大陸の中央という位置は陸路を通って、ロシア、欧州、中東、南アジアのどこにもつながる。すでにナヴォイ特区の工場で作られた高圧電線などは中東への輸出されている。そういう点で、この国が将来、ユーラシアの工場となることも不可能ではない。そのためにも、国境を越えた交通ルートの発達が重要になってくる。

 今後、生産力が高まり、付加価値の高い製品を創り出す段階へと本格的に近づいてくれば、高い技術力を持った日本企業の出番は多くなるはずだ。

(藤橋 進、写真も)