袋小路の中国経済、住宅2千万戸が売れ残り

2016 世界はどう動く-識者に聞く(25)

評論家 石平氏(下)

本当に不動産バブルは破裂したのか。

石平氏

 現在、不動産は売れないから在庫が増えている。中国全体では20億平方㍍の住宅売れ残りがある。1軒、100平方㍍としても2000万戸だ。東京が数個そっくり、売れ残っている格好だ。

何が住宅バブルを生み出したのか。

 通貨供給量を10年間で6倍にまで膨らませた。それほどお金を刷って、みんな不動産投資をやった。あるいは銀行から借金して不動産を買う。それで不動産バブルを膨らませた。

特にリーマンショック後、中国は4兆元(約56兆円)の財政出動を図った。

 温家宝首相(当時)の失敗だった。温家宝が出した4兆元は、災いのもととなったし、金融緩和も大きかった。習政権は、こうした温家宝の失敗のつけを背負った格好だ。

国有企業の大破綻は起きるのか。

 すでに起きている。国家の基幹産業である鉄鋼産業がその典型だ。唐山松汀鉄鋼公司は、生産停止に追い込まれた。武漢鉄鋼集団は、1万2000人のリストラをやる。鉄鋼だけでなく石炭産業も打撃は大きい。6年前、石炭1㌧は1万円したが現在は2000円足らずだ。多くの山が閉山に追い込まれたり、人員整理に走っている。

 不動産バブルの時、需要が急拡大し特需に沸いた。しかし、突然終わったら、一気に駄目になる。

しかし、中国はダイナミックな手を打ってきた。一帯一路構想やそれを実行するための資金的裏付けとなるアジアインフラ投資銀行(AIIB)もそうだ。

 だからAIIBも一帯一路も、投資で国内経済を維持することは無理だから、仕事がなくなって破綻寸前の国有大企業に仕事を手当てするために海外でその活路を開く魂胆だ。

 しかし、共産党独裁政権下では国内でこそ、共産党の指示の下、何でもできる。しかし、海外では北京の思惑通りにはならない。

 インドネシアで高速鉄道を取ったけれど、インドでは失敗している。一帯一路で中国経済を救うことができるかどうかは、かなり難しい問題だ。

マクロ経済から見ると中国経済の一番の問題点は?

 消費が異常に低い。日本は国内総生産(GDP)の6割を消費が占めるが、中国は4割に届かない。異常事態だ。そもそも経済は人々が生活するためにある。中国ではその消費は4割未満だ。

中国の経済危機は、共産党政権そのものの崩壊につながるのか。

 独裁政権が永遠に生き延びられるかといえば、当然無理だ。どう考えても、結論が出ている。ますます限界状況に直面しているのが今の中国だ。

中国では独裁政権に取って代わる受け皿が無い。

 共産党政権はそう簡単に潰(つぶ)れるものでもないが、代替機能が不在だから政権が崩壊しないということはない。むしろないことで、天下大乱に陥るリスクが高くなる。中国の歴史は常にその繰り返しだった。

大乱時に軍区はパワーを持ってくるのか?

 その点は分からない。今の軍区と言っても、日本人が想像するほど力を持っていない。軍区の司令官といえども、中央の命令一つでいつでも首になる。大体、軍区の司令官は軍を動かす権限がない。1連隊を動かすにも、中央軍事委員会の直接の命令がないとできない。軍司令官は軍を管理するだけが任務で、軍を動かす権限は一切ない。

 瀋陽軍区が突出したパワーを持っているとか言われることがあるが、あれは都市伝説であり妄想だ。

(聞き手=池永達夫)

=終わり=