シリア和平、アサド政権と取引も緩慢な退陣を

2016 世界はどう動く-識者に聞く(22)

「改革と発展党」党首
モハメド・アンワール・サダト氏(下)

ISの思想とイスラム法(シャリア)、コーランとの関係をどう考えるか。

モハメド・アンワール・サダト氏

 シシ大統領が言ったように、我々は、我々の宗教(イスラム教)の、特にフィク(シャリア=イスラム法)の新たな解釈をする必要がある。なぜなら、我々の何人かの古いイスラム教指導者が書いたものが今日、問題を起こしているからだ。それらはタクフィーリー派の思考方法で、現代的見解を持った現代的イスラム教徒を殺害する許可を与えている。

 大統領が宗教指導者に対し、このことについての話を始めさせ、人々に、イスラムの寛容性や平和性、友好性について説明するよう押し出していることは非常に重要だと思う。我々は新世代にキリスト教徒もユダヤ教徒もイスラム教徒も、一つの神の下に一緒に共生すべきだということを伝えるべきだ。我々は、シシ大統領のキャンペーンを引き継ぐ必要がある。

米国の中東に対する影響力が弱まり、それに代わってロシアが影響力を拡大している。

 我々の米国との戦略的関係は、現在は残念ながら良くないが、私は、希望を失い、興味や利益を失ったオバマ政権が退き、新たな政権が出現すれば良好で希望的な関係が構築できると思う。共和党のトランプ氏は好ましくないが、誰か別の人物が出現してほしいのだが。

 私はロシアが戻って来ることには抵抗する。私はロシアとの関係が深かった1950年代や60年代のおかしな時代を見てきている。我々は時々、東側と西側のバランスを取ることも必要だ。しかし、ロシアとの関係を持っていけば、我々には未来はない、というのが私の意見だ。

国際社会は、シリア内戦を終結させ得るか。アサド大統領はとどまるべきか、リタイアすべきか。

 湾岸諸国や国連、欧州諸国など全てはアサドが出て行くべきだと信じながらも、皆、もしアサドが出て行ったならば、誰がその後をコントロールするかを恐れている。

 だから彼らは、悪魔と取引しようと決断した。もし我々が新たな悪魔を連れて来た場合、新たな悪魔が何をするか分からないのだ。我々エジプトもアサドに反対することはない。しかし我々は、彼はゆっくりと退陣しなければならないと言い続けなければならない。 一方、政治プロセスを作って、穏健なシリア人が権力を掌握するようにさせなければならない。私は、ロシアがこの点で大きな役割を果たすことを望んでいる。

アラブ合同軍とイスラム合同軍の問題点と将来について伺いたい。

 サウジがイスラム合同軍を持ち出した時には皆驚いた。突然の話にたくさんの国が、いや、我々はそうしない、と言ったのだ。我々エジプトは、イエスともノーとも言わなかった。我々は彼らからの財政支援を必要としているからだ。

 我々はアラブ合同軍をまとめなければならない。これは、地域の一定の支持を受けたアラブ連盟の傘下にあるからだ。イスラム合同軍はただのショーで、これは、アメリカからサウジに対するメッセージがあって、10万人規模のイスラム合同軍による対テロ戦部隊を創設すると言ったのだと思う。

(聞き手=カイロ・鈴木眞吉)