鍵握る軍人事、習氏「改革」掲げ胡派に反撃
2016 世界はどう動く-識者に聞く(24)
評論家 石平氏(中)
来年の共産党大会が問題となる?
そこが天下分け目の天王山だ。江沢民派が追いつめられた後、胡錦濤派と習近平派の雌雄を決する本格戦争になる。習主席も自分はまだ胡氏の手のひらの中で泳いでいると分かっている。
だから習主席とすれば2年以内に、胡錦濤派を押さえつけ、次の党大会で自分が主導する人事で首脳部を固めないといけない。
本来なら昨年の5中全会(中央委員会第5回全体会議)で習主席は人事に手を付けたかったところだが、それができなかった。習主席は今年秋の6中全会で、人事に手を付けられるかどうかがポイントとなる。それがかなえば、そのまま来年の党大会に滑り込むことが可能だ。
この6中全会で人事に手を付けられなかったら、自動的に党は胡錦濤派に牛耳られていくことになる。
習主席とすれば時間がない。
習主席の最大の敵は時間かもしれない。習主席も胡前主席もそれは熟知している。この2年間が勝負どころとなる。この2年間、習主席とすれば人事に手を付け、政権に踏みとどまることができるかどうかの正念場だ。
中国は現在、軍の改革が始まっている。
習主席がやろうとしている軍の改革こそ、胡錦濤体制への反撃だ。軍の改革をてこに、胡氏の軍人事をひっくり返すつもりだ。
成功しそうか。
分からない。いずれにせよ軍改革は実務的な軍の現場からの要請ではなく、政治がらみと見たほうが現実をとらえている。逆にいえば、普通のやり方では習主席は軍を掌握できないということでもある。だから改革という大義名分で、現在の組織を壊して、新しい人事に手を付けるということだ。
マイケル・ピルズベリー氏の「百年マラソン」をどう評価するのか。
ちょっと想像しすぎだ。そういう方向はあるかもしれないが、100年のプランがあるとは思わない。
ただ中国にはそうした体質はあるのでは?
確かにそうした体質はある。しかし、中南海でそうした歴史的なナショナルゴールを定めているわけではない。
”小平の時代も、経済がどうなるか分からない中、必死だった。一貫したプランは存在しない。ただ中華帝国的な発想とか国の方向性みたいなものはある。21世紀の中国は大帝国が復活してアジアを支配するというものだ。
中国ウオッチャーとして今年、一番注目しているのは何か。
経済がどこまで落ちるか。不動産バブルが最終局面を迎えて大暴落するかどうかだ。
さらに次の全体会議で、習主席がどこまで軍人事をいじれるかだ。
経済指標では?
電力消費だろう。李克強指数の一番目はこれだ。昨年1月から9月までの電力消費量は、前年同期比で0・8%増。9月、10月の分は、マイナス0・2%だ。この数字だけみても、成長率6・9%というのは嘘(うそ)だ。
さらに対外貿易がある。相手があり、それこそ中国政府としては嘘がつけない数字だ。昨年1月から11月まで輸出がマイナス2・2%、輸入はマイナス14・4%。そんな状況では成長率はゼロかマイナスだろう。
(聞き手=池永達夫)






