アフリカ開発と日本 投資や消費に高まる関心
日本・アフリカ連合(AU)友好議員連盟会長 逢沢一郎氏
日本・アフリカ連合(AU)友好議員連盟の逢沢一郎会長(衆議院議員)はこのほど、本紙のインタビューに応じ、高い経済成長が続くアフリカに対し日本企業の関心も高まっており、政府や企業は将来を見据えた戦略的な対応が必要だと強調した。(聞き手=政治部・武田滋樹、社会部・川瀬裕也)

あいさわ・いちろう 昭和29年、岡山県生まれ。慶応大工学部卒。松下政経塾第1期生。自民党衆議院議員(岡山1区)。通産政務次官、外務副大臣、衆議院議院運営委員長、予算委員長、政治倫理審査会長など歴任。当選11回。
日本・AU議連はどんな活動をしているか。
まず国会議員にアフリカを知っていただく。できるだけ時間をつくり、資金も工面して、2、3人のチームを複数作ってアフリカ各国に派遣し、大統領や首相、議会の方々、現地で活動中の国際協力機構(JICA)関係者、青年協力隊との接触、政府開発援助(ODA)プロジェクト現場の視察等々を続けてきた。
ソマリア、南スーダンなどを除けば、AU54カ国のほぼすべての国を1~2回訪問している。恐らくG7、G20の国会議員の中でアフリカを最も訪問しているのは日本だ。
1993年から始まったアフリカ開発会議(TICAD)は成果を挙げているか。
来年8月に7回目のTICADが横浜で開催されるが、日本はこのTICADを通じてアフリカの開発、成長、安定等に官民挙げて協力してきた。日本・AU議連も精いっぱい支援している。
アフリカ各国へのODAは非常に成果を挙げてきた。最近は中国の努力で相対的に日本のポジションは小さくなったが、伝統的には交通インフラの整備、電力や水の確保、農業分野を含め国の成長発展のための土台をJICAプロジェクトを通じて作り上げてきた。
アフリカは日本に何を期待しているか。
アフリカの指導者は東南アジア諸国連合(ASEAN)の成長に非常に関心を持っている。なぜかというと、1950年前後はアフリカとASEANの経済状況は似たような水準だったが、今は差がついてしまった。
なぜ、ASEANは成功してきたか。それぞれの自助努力に加えて、日本が上手に応援してきたという意味で、日本の努力と支援に対して非常に期待感がある。
そういうASEANのある種の成功体験をベースに人づくり、教育と職業訓練。そしてグローバルヘルス、つまり医療保健。これらに力点を置いている。
日本のODAの理念は「自助努力を援助する」だが。
オーナーシップという言葉が深く理解されるようになってきた。つまり、ガーナならばガーナの人たちの自助努力、それがなければ、いくら日本が援助してもなかなか成果は上がらない。
アフリカの人口は今約13億人、国連人口予測(2017年)を見ると、22世紀の初頭には、場合によっては44億人にもなる。ここが最大のポイントで、経済成長が低く、農業の生産性も低く、紛争が絶えず、医療や保健の水準は低く、難民・移民が後を絶たない。そんな状況で40億人のアフリカになれば、世界最大のリスクになり得る。
アフリカは21世紀に入り、高い経済成長を続けている。
アフリカは今、変わりつつある。大きく投資や消費の可能性が出てきた。日本の経済界、民間も興味や関心を示しつつあり、アフリカに工場や営業拠点を持つ企業が右肩上がりで増えてきた。ODAも必要だけど民民(民間と民間)の関係を強化したいという要請が強くなってきた。国によっては、そういう段階を迎えつつある。
近ごろは、ナイジェリアの政治家と企業家が日本に来て、日ナイジェリアのビジネスセミナーをジェトロ(日本貿易振興機構)の応援で開くと、たくさんの日本企業が集まる。モザンビークもやる、ガーナもやる、そういう状況になってきた。
戦略性あるアフリカ外交を
ビジネスパートナーとなり得る国もできているということか。
大きな認識として、アジア太平洋の繁栄はこれからだんだんインド洋の方向へも広がっていく。アフリカのケニアやタンザニアやモザンビーク、南アは環インド洋の国々だ。だからアジア太平洋地域の発展がインド洋に展開する。インドもいずれ世界最大の人口大国になる。
そのインドはアフリカにも大変な足掛かりを持っている。特にインド洋側にインド系アフリカ人が非常に多い。ビジネス的には日本とインドが協力してアフリカに活動拠点を設けて経済活動を盛んにする。こういう戦略も考えていかなくてはならない。
将来はアフリカが成長を通じて世界経済に大きく貢献する。20億、30億の人たちが大きな消費経済を生むだろうし、幾つかの国はものづくりの拠点になるだろう。日本は貿易立国だから、将来を考えると、アフリカとウィンウィンの関係が確保できるように今から準備をしておく。そういう戦略性を持った対アフリカ外交が大切だ。
物量的に日本を圧倒している中国のアフリカへの援助をどう見るか。
中国の途上国支援は光と影がある。もちろん大きなプラスだが、問題を引き起こしているのも事実だ。
中国は世界第2位の経済大国で、国連安保理の常任理事国で、そういう意味では世界のリーダー国だが、もう一つの顔を持っている。多くの貧困層を国内に抱えて、「われわれはまだ発展途上国なんです」というポジション。だから、先進国クラブといわれる経済協力開発機構(OECD)のメンバーではない。OECDの開発援助委員会(DAC)で途上国支援に関する一定のルール・基準を定めているが、中国はその外にいる。だからさまざまな問題が起きてくる。
日本の強みを生かした、人材の育成や技術教育の具体的な試みは。
日本の特徴・特性を生かしたものとして、「アフリカの若者のための産業人材育成(ABE)イニシアティブ」がある。アフリカの志の高い大学院レベルの方々を留学生として日本に派遣してもらう。特徴は、大学で勉強するだけでなく、日本の企業にインターン生として入り、日本の企業を肌で感じてもらうことだ。
そんな方々が将来、正社員として採用されたり、アフリカ工場の準備責任者に任命されたりすることを想定しながら、大きな意味での人材育成、そして日本のビジネスにもプラスにつながるという意図を持ってスタートさせた。18年は第5期アフリカ45カ国から117人が来ている。