災害派遣で訓練に支障も

 災害大国・日本にとって、災害への対処は戦争と同じぐらい重要だ。「災害(天災)は忘れたころにやってくる」という警句があるが、今年の夏は「災害は忘れる前にやってくる」という状態が続いている。『大阪府北部地震』(6月18日)。岡山や広島、愛媛を中心に200人以上の犠牲者が出た『西日本豪雨』(平成30年7月豪雨)。関西地方を直撃した『台風21号』(9月4日)。最大震度7を記録した『北海道胆振東部地震』(9月6日)。また、今年の夏は日本全国で35度を超える猛暑日が続き、熱中症で搬送される人が数多く出た。

 大きな災害が起きれば、常に自衛隊は被災地に出動する。警察、消防も同じように被災地に出動するが、自衛隊でないと対応できない場面が多々ある。

 北海道では地震により、ほぼ全域で停電(ブラックアウト)が起きた。停電に伴い、新千歳空港が閉鎖され交通機関が運休、信号機やエレベーターが停止した。災害拠点病院も停電した。充電ができないことで携帯電話や、ATM・電子決済(クレジットカード決済など)も利用できなくなった。人口約197万人の札幌市の都市機能は完全に麻痺(まひ)。市内では大規模な液状化も起きた。また、厚真町では大規模な土砂崩れにより犠牲者が出た。

 今回、自衛隊は地震が起きると、災害派遣要請に基づき、直ちに約4000人の隊員が被災地に向かい、最大2万5000人態勢で安否不明者の捜索活動や、給水・入浴支援などを行った。即応予備自衛官も招集された。このほかに防衛省のチャーター船「ナッチャン・ワールド」が施設器材などの輸送に従事。南極行きを前に国内を巡航する総合訓練中の海上自衛隊砕氷艦「しらせ」も救援活動に参加した。

 自衛隊の本来の任務は「国防」であり、戦う集団だ。各部隊では年間計画を立てて訓練を実施している。だが一方、災害派遣が続くことにより、訓練が十分にできない部隊も出てきている。自衛隊の精強さを維持するためには訓練は欠かせない。

 自衛隊を便利屋的に使い過ぎることは、精強さの低下に繋(つな)がると感じているのは、私だけか…。

(濱口和久)