深刻なハイブリット脅威
日本ではハイブリット攻撃という言葉は馴染(なじ)みが薄いかもしれないが、欧米各国ではその脅威は深刻な問題となっている。
ハイブリット攻撃とは、軍事作戦に非軍事的な工作を組み合わせ、国家や社会の脆弱(ぜいじゃく)な部分を標的とする攻撃のこと。サイバー攻撃、偽ニュース(フェイクニュース)拡散、選挙介入、領空侵犯、エネルギーをめぐる脅しなどが含まれる(時事6月22日)。
もっとも効果が大きい攻撃は、フェイク情報を用いて敵を攪乱(かくらん)させることだ。大量のフェイクニュースを流して敵国の世論を操作するもので、自国民までをも騙(だま)して目的を達成する場合もある。
ハイブリット攻撃は、ロシアのプーチン大統領による西側への報復のために起きた「革命」ともいわれている。
これに対し欧米各国の政府やメディアは、ロシアへの対抗手段を講じ始めている。欧州連合(EU)は2015年、ロシアメディアおよびEU圏内のロシア系メディアが流すデマやフェイクニュースを暴く目的で「East StartCom」というチームを発足させた。
ドイツやチェコでは、ロシアのフェイクニュースに対抗する機関を設立。ロシアと1340キロメートルにわたって国境を接するフィンランドは、国境警備隊を強化し、ドローンの撃墜、不審な情報の抹消、通信網の封鎖などを警備隊独自で迅速に決定できる体制とした。
また、スウェーデンはバルト海の中間に位置し、カリーニングラード(ロシア領の最西端に位置し、ロシアの最重要軍事拠点の一つ)から300キロメートル離れたゴットランド島に350人の兵士を駐留させ、カリーニングラードのロシア軍の動きを監視している。
アメリカでは、2016年の大統領選の際、大量のフェイクニュースが流され、ロシアの介入が噂(うわさ)された。
日本は今のところロシアからのハイブリット攻撃は仕掛けられていない。日本の場合は、ロシアよりも、中国や北朝鮮が仕掛けてくるハイブリット攻撃への警戒が必要だ。
(濱口和久)





