デュアルユースのすすめ

 東京・市谷の防衛省に隣接するホテルで、防衛装備庁主催の「技術シンポジウム2017」が11月14日から2日間の日程で開かれた。

 防衛装備庁は、平成27年10月1日に発足した組織で、装備品等について、開発及び生産のための基盤の強化を図りつつ、研究開発、調達、補給及び管理の適正かつ効率的な遂行並びに国際協力の推進を図ることを任務とし、防衛省の外局に位置付けられている。

 今年のシンポジウムは、「将来戦闘機に関する研究開発ビジョン」に基づいて推進している研究開発と、防衛装備品の創製に欠かせない「試験評価」を中心のテーマとして、防衛装備品に関する施策・研究開発成果など、幅広い内容が紹介されていた。

 私が所属した防衛大学校材料物性工学科研究室の恩師(現在は名誉教授)のチームもブースを出展。研究テーマは「赤外線ステルス塗料の開発」。この技術は防衛だけでなく、防災(民生分野)にも利用できる技術だ。

 発表された研究テーマの中で、私が特に注目したのは「高機動パワードスーツの研究」である。パワードスーツ技術は、民生分野においても、主に医療・介護分野での研究開発が進められているが、高齢者の支援、脳卒中、脊髄損傷等のリハビリ等に重点が置かれ、アシストする動作は歩行等に限られる場合が多い。

 一方、防衛用のパワードスーツには、隊員が装着・携行している装備品の重量を支持することに加え、歩行だけでなく、駆け足のような素早い動作を可能とし、砂地や山岳地帯等の不整地にも対応する必要がある。そのため、民生分野と比較し、高機動化が求められ、各アクチュエータの高出力化、高応答化等が必要となる(シンポジウム発表資料より)。

 この研究を行っている防衛装備庁先端技術推進センターでは、島嶼防衛や災害派遣等に活用できることを目指している。この他にも防衛、民生分野の両方に活用できる技術がシンポジウムでは紹介されていた。防衛技術を敵視する人にも、是非、一度は足を運んでもらいたいシンポジウムだ。

(濱口和久)