「自衛隊明記」で望むこと

 10月に行われた衆議院総選挙後の国会議員の勢力図を見ると、改憲派が3分2を超える状態となった。安倍晋三首相が目指す日本国憲法第9条に「自衛隊を明記」することへの流れが加速することを期待したい。

 自衛隊を憲法第9条に明記することには、私も賛成だが、いつまでも『自衛隊式軍事用語(和式軍事用語)』を使用し続けることには違和感を覚える。幾つかの自衛隊式軍事用語を挙げれば次の通りだ。

 「歩兵」を「普通科」、「砲兵」を「特科」、「工兵」を「施設科」、「兵站」を「需品科」、「巡洋艦(駆逐艦)」を「護衛艦」、「軍医」を「医官」など。さらに言えば、いずも型護衛艦や、ひゅうが型護衛艦は、外見はまさに「空母」そのものであるが「護衛艦」と呼んでいる。

 階級の呼称も、「少将」を「将補」、「大佐」を「1佐」、「少尉」を「3尉」としている。その他にも、数えればきりがないほど世界の軍隊では使用されていない用語が自衛隊では使用されている。

 通常、「普通科」と聞けば、高等学校の専攻課程を連想する人が大多数だろう。「工兵」=「施設科」と連想する人も皆無に等しい。

 自衛隊についての知識がなければ、階級の呼称も、1よりも3のほうが数字が大きいから、「3佐」のほうが「1佐」よりも階級が上だと思うはずだ。

 憲法第9条に「自衛隊を明記」するのであれば、自衛隊式軍事用語についての見直しも、同時に進めるべきではないだろうか。突き詰めていけば、自衛隊という名称自体も、本来の姿である国防軍(軍隊)という名称に変えるべきだろう。野党時代の自民党憲法草案では「国防軍」だったはずだ。当然、海外では自衛隊は軍隊としての扱いを受けている。

 だが、安倍首相が憲法第9条2項(陸海空の戦力を保持しない)との整合性を保つために、自衛隊のままで明記することを既定路線と考えているのであれば、是非とも「国防軍」の名称で明記することを検討してほしいと、私は思う。

(濱口和久)