野党議員の「強制わいせつ疑惑」を報じるも追加報道がほとんどない文春
◆離党ではなく辞職を
小学生女児への暴行容疑で民進党参院議員小川勝也氏の息子・遥資容疑者が逮捕された。これを受けて、小川氏は「党に迷惑をかける」として参院幹事長を辞任するだけでなく、離党届けを提出した。
遥資容疑者は学生とはいえ、21歳であり成人している。親とは別人格で、責任能力もあるので、親が出てきて謝るのはどうかという議論がこういう事件のたびに繰り返される。とはいっても、これで親が何もしないでいると、特にそれが国会議員などの公人の場合は世間から厳しい批判を浴びることになる。何らかの行動を起こさざるを得ないのだ。
ただし小川議員の言い草がおかしい。「党に迷惑をかける」というのはどういうことか。迷惑を被ったのは被害者でありその家族だ。もちろん、小川氏は被害者家族に謝罪したが、離党とは「党」相手だというところに根本的な意識のズレを感じる。もし謝罪する意思があるなら有権者=国民にすべきで、それには議員辞職しかないはずだが。
◆双方との薄い信憑性
さて、選挙も終わり臨時国会が開かれ国会は新勢力構図の中で懸案をめぐって議論が戦わされる、ハズだった。しかし、そのスタートを飾ったのはこうした野党のスキャンダルだった。
民進党から出て立憲民主党の結党に参加した初鹿明博衆院議員(比例東京)に「強制わいせつ疑惑」があると、週刊文春(11月9日号)が報じている。初鹿氏については昨年末、週刊新潮(16年12月29日・17年1月5日合併号)で女優の胸を触り、ズボンを脱ぎそうになったり、歌舞伎町のラブホテルに強引に連れ込もうとしたことが報じられた。いわば“札付き”なのだ。
今回、文春が報じたのは別の女性で、初鹿氏が「支援者の一人」であるこの女性にタクシー内でわいせつ行為を強要したというものだ。「その詳細については、『セカンドレイプ』を防ぐ意味で詳述しない」と同誌が書くほどの行為だったという。同誌の取材に初鹿氏は「あまり覚えていない」と否定している。「相当に酔っ払っていて呂律が回らない」状態だったという。「覚えていない」というのは都合のいい言い訳だ。
とはいえ、告発した女性は別に被害届を出してはおらず、同誌にも仮名で登場している。両者の主張も真っ向から対立し、双方とも信憑(しんぴょう)性が薄い。特に酒席の延長で起こったことは記憶も定かでなく、証明が難しい。初鹿氏が“狙われた”のかどうかも不明だ。しかし、酩酊(めいてい)して女性に絡むという行為だけでも「まっとうな政治」を標榜(ひょうぼう)する政治家の資格に疑問符は付く。
それに、この問題に白黒つけたければ、同誌はタクシーを割り出して、ドライブレコーダーを確認すれば済むことだが、記事を見る限り、それを行っている様子はない。別に初鹿氏の肩を持つわけではないが、「疑惑」はそれが報じられただけで大きなダメージとなる。後になって疑惑が確定したとか、勘違いだったとかの追加報道はほとんどない。
◆説明不十分な山尾氏
同誌は先週号(11月2日号)で初当選した青山雅幸氏(比例東海)の「元秘書」に対するセクハラ疑惑を伝えた。その後、同党は「無期限の党員資格停止処分」にした。初鹿氏に対しては今回の報道を受けて「6カ月役職停止処分」というだいぶ甘い処分を行っている。同じような“罪状”なのに処分の軽重が違うのは何故(なぜ)なのか。同誌にはその辺も追及してほしいところだ。
記事では不倫疑惑が報じられた山尾志桜里衆院議員(愛知7区)も取り上げている。民進党を離党し無所属で当選した山尾氏は立憲民主党の会派に入る。選挙中、不倫疑惑について「十分な説明」をしてこなかった山尾氏を同党は受け入れるわけだ。「もりかけ(森友学園、加計学園)は終わっていない」というなら、疑惑を十分な説明で晴らさない山尾氏も同じだ。
週刊新潮(11月9日号)は結果的に与党圧勝を招いた格好の“希望の党合流騒動”を取り上げている。「『小池百合子』『前原誠司』に身内からの罵詈雑言」の記事だ。
民進、立憲、希望と、とても「安倍政治を終わらせる」どころの話ではない。日本の政治のためには健全な野党が必要だ。健全野党づくりのためには、報道は健全でなければならない。
(岩崎 哲)