憲法改正を参院選の争点に 片山虎之助氏
おおさか維新の会共同代表 参議院議員 片山虎之助氏に聞く
緊急テーマ優先で論議すべきだ
安倍晋三首相が在任中の憲法改正の意向を表明したことで、今夏の参院選の重要争点になるかどうか注目されている。おおさか維新の会は独自の改正案を発表、論議の深化を促している。片山虎之助共同代表に同党の狙いを聞いた。
(聞き手=政治部・小松勝彦)
おおさか維新の会は3月26日に憲法改正原案を発表した。

かたやま・とらのすけ 昭和10年岡山県生まれ。東大法学部卒業後、自治庁(後に自治省)。岡山県副知事、消防庁次長などを経て、平成元年、参院選で自民党から初当選(現在4期目)。郵政相、自治相、総務相など歴任。同25年、日本維新の会政調会長。現在、おおさか維新の会共同代表。
平和主義、国民主権、基本的人権の尊重という平和憲法の3本柱は守っていかなければならないが、憲法が制定されて70年が経(た)ち、今の世の中に合っていない部分、足りない部分がたくさん出てきている。その部分は改正しないといけない。その中でも先(ま)ず国民が緊急に必要性を感じているテーマから取り掛かった方が、憲法改正論議に具体的に入りやすいと思う。
そういう観点から、わが党は3項目を提案している。一つが、国の統治機構、地方から見れば地方分権・地域主権改革。東京圏の一極集中の問題は深刻で、日本の人口はこの5年間で94万人減っているのに、東京圏だけが30万人増えている。他の圏域は全部減っている。このままでは地方には若者がいなくなる。この状況を変えるためには地方が格別の力を持つよう国の仕組みを変えないといけない。
もう一つが憲法裁判所の設置。昨年、安保法制で国論が二分されたが、これは最高裁の判断が示されないからだ。最高裁は憲法問題についての政治的判断を嫌がる。だから、欧米にある憲法裁判所を設置して判断してもらう。
そして教育の無償化だ。いま一番問題なのが少子化だ。それから、教育の格差が所得格差となって世代連鎖が起きている。だから、保育園、幼稚園から大学、大学院まで無償にする。無償化が憲法で義務付けられると国は法的措置、予算措置をしなければならない。国民は重い教育費負担から解放されるので出生率は上がる。所得格差が教育格差となる連鎖は消える。
憲法改正の肝は第9条だが、どのように考えているか。
9条も改正しなければならないが、この問題は国論を二分する。今は国民の意見はまとまらないのではないか。本来は、自衛隊を認知し、集団的自衛権も一定の範囲を憲法で認めた方がよい。憲法に基づき法律で詳細に規定すればよいのだ。
安保法制では大議論になったので、もう少し国民の認識の成熟を待たなければならないと思う。しかし、議論は大いにやるべきだ。われわれも安保法制では、集団的自衛権を一定の範囲、すなわち自国防衛に係るものは一定の範囲で認める。ただ、日本周辺で、安保条約などを結んでいる米国など日本を防衛している国の軍艦は守る、という歯止めを明確にしなければならない。政府・与党案は範囲が広すぎて違憲の疑いが出てくる。
今夏の参院選で憲法改正を争点にすべきか。
今度の参院選で争点にしないでいつするのか。憲法はずっと触らないでよいのか。経済政策、震災対応も争点にしたらよいが、憲法も争点にして一向に構わない。ただ、あらかじめ改憲派、護憲派といった色分けをするのは良くない。改正には衆参で3分の2以上の賛成が必要で、それから国民投票だ。国民が納得しないことには簡単にできるわけがない。憲法を良くするためにみんなで議論すべきだ。
身を切る改革で教育無償化
民進党の岡田克也代表は安倍内閣の下では憲法は改正させないという姿勢だが。
民進党も憲法審査会に出て、はっきり反対なら反対の意見を言ったら良い。ところが、民進党は改正大いにやるべしという人から絶対反対の人までいてまとまっていない。
憲法審査会で各党が改正テーマを持ち寄って合意したものから論議し、最終的には国民投票に掛けたら良い。ところが、憲法審査会を開きたくないとか、憲法論議は安倍内閣ではしないとか、こういうことを言っていたら論議は進まない。
おおさか維新の会は今夏の参院選で何を訴えていくか。
わが党は、自公でも民共でもない第3極として、政権には是々非々、反対するときにはしっかりとした建設的な対案を出す。今の自公や民共で国民のニーズを吸収できるとは思わない。自公や民共のできないことをやる第3極が必要だと思っている。将来はこの第3極を大きくして2極とし、自公と政権を争いたい。
われわれは身を切る改革を行う。財界、官僚、業界団体の代弁はしない。民共は労働組合を代弁するが、われわれは既得権益やしがらみとは縁がないので、国民一人ひとりの願いを汲み取っていく。増税や借金をせずに財源を生み出して、財政再建、国民福祉の増進を図っていく。そのために無駄をなくし、公務員の給与をカットし、国会議員の定数を削減する。それによって4~5兆円の財源を生み出し、教育の無償化を実現していく。