【社説】国交省統計不正 解決先送りした責任は重い
国土交通省の「建設工事受注動態統計」書き換え問題で、外部弁護士らでつくる検証委員会が報告書をまとめた。
重要統計の信頼を損なった責任は重い。国交省は再発防止を徹底すべきだ。
書き換えが長年継続
報告書によると、建設工事受注動態統計の調査票の書き換えは、事務負担軽減などのため、統計が始まった2000年以前から行われていた。推計方法を見直した13年4月以降は実態よりも数値が水増しされていたが、担当者は疑問を持たずに継続してきた。
この統計では13年4月以降、調査票の作成が間に合わない事業者には、負担軽減のために翌月以降に複数月分をまとめて提出することを容認。一方、未提出の場合はその月の実績をゼロとはせず、一定の推計値を計上するルールも併せて採用した。このため、複数月分を一度に提出した事業者は、前月分以前の推計値と実績値が二重に計上される例もあった。
建設工事受注動態統計は、建設業者が公共機関や民間企業などから請け負った工事の実績を集計するものだ。国内総生産(GDP)の推計や政策の立案などにも活用され、政府が特に重要と位置付ける基幹統計に当たる。にもかかわらず、書き換えが行われてきたことに唖然とさせられる。
報告書は「あえて大きな数字を公表しようとする意図は認められない」としている。とはいえ、何よりも正確さが求められる統計で、こうした集計の仕方が許されるわけではない。報告書は「手順に従って業務をこなすことに疑問を持たず不適切処理が長年無批判に継続した」と非難した。
さらに悪質なのは、国交省が不正の発覚を恐れ、解決を先送りしてきたことだ。19年6月には、担当部署に異動してきた課長補佐が、書き換えに疑問を抱いて上司に相談したが、上司は訴えを取り上げず、書き換えはその後も継続した。20年1月以降に会計検査院から書き換えについて指摘を受けた時も、二重計上が生じていることは報告しなかった。
これでは隠蔽(いんぺい)を図ったと言われても仕方がない。報告書はこうした対応について「責任追及を回避したいという意識」があったと指摘している。非難や処罰を恐れ、問題を放置したのであれば、国の重要統計作成に携わる資格はあるまい。
書き換えの原因について、報告書は幹部職員の情報共有不足や担当者の業務過多が原因と認定。人事で統計業務の軽視が見受けられるとして、十分な人数を適切に配置するよう求めた。職員が統計についての十分な知識を学ぶ機会を設けることも提言している。
正確な統計作成の環境を
この問題で、国交省の山田邦博事務次官や歴代の統計部門幹部ら計10人が訓告や減給などの処分を受けた。
国交省は二つの有識者会議を立ち上げ、再発防止策の検討や他の所管統計の検証などに着手し、書き換えに関与した職員を処分するという。正確な統計作成のための環境を整備し、信頼回復を急ぐ必要がある。