【社説】待機期間短縮 追加接種加速と両輪で進めよ


新型コロナウイルス

 全国的に感染が急拡大している新型コロナウイルスの「オミクロン株」対策として、政府は感染者の濃厚接触者に求める待機期間を14日間から10日間に短縮すると発表し、都道府県に通知した。社会機能維持のための措置だが、ワクチンの追加(3回目)接種の前倒し加速をともに進める必要がある。

 潜伏短いオミクロン株

 待機期間短縮は、オミクロン株による感染者や濃厚接触者の急激な増加で、医療や公共交通機関、役所など社会機能の維持に欠かせない「エッセンシャルワーカー」の欠勤が増えないようにするためだ。エッセンシャルワーカーについては、PCR検査か抗原定量検査で感染者との接触から6日目に陰性が確認されれば待機解除を認める。

 この決定について、後藤茂之厚生労働相は「オミクロン株の潜伏期間は3日のケースが最も多く、10日を超えることは極めてまれであると判明した」と説明。従来株からオミクロン株への置き換わりは12日時点で40都府県で70%を超えている。

 オミクロン株が急拡大した米国や英国では実際、エッセンシャルワーカーの感染で電車の本数が減るなど社会機能への影響が出ている。そのため両国では、感染者の待機期間の大幅な短縮を決めた。米カリフォルニア州などは、陽性となった医療従事者が無症状であればマスク着用を条件に職場復帰することを認める事態となっている。

 しかし米英の隔離期間は、あくまで感染者を対象にしたものだ。濃厚接触者については、ワクチン接種の完了者は免除されている。

 日本の場合、濃厚接触者の待機期間は従来株の潜伏期間が最大14日間であることに基づく。大事をとっての措置として理解はできる。しかし、日本でもワクチンの2回接種が進んだ。接種を完了した濃厚接触者も同様に14日間の隔離とするのであれば、ワクチンの効果はないとみていることになる。何のための接種なのか。

 確かに、ワクチン効果は2回目接種から6カ月を過ぎるとかなり低下すると言われている。感染力の強いオミクロン株では、ブレークスルー感染が増える傾向がある。そのために、欧米では3回目接種までの期間を2回目後の6カ月からさらに短縮している。

 感染対策と社会経済活動の両立を目指すのであれば、ワクチン効果を勘案した対応をする方が科学的だ。オミクロン株の拡大は国内でも十分予想されていたにもかかわらず、追加接種については厚労省が2回目接種から8カ月後にこだわり出遅れてしまった。

 いま政府が全力を挙げるべきは、地方自治体と連携し、追加接種の前倒しを加速することだ。既に前倒しが決まっている医療従事者だけでなく、エッセンシャルワーカーや高齢者なども追加接種を急ぐ必要がある。

 さらなる短縮の検討を

 そして今後さらに感染者が拡大することを想定し、濃厚接触者のうち追加接種を完了した人は待機期間をもっと短くすることを検討すべきだ。今回決定した短縮では追いつかなくなることも考えられる。