【上昇気流】「春は曙(あけぼの)」と清少納言は言うけれども、寒中の曙も情趣がある


夜明け

 夜明け前、東の空が白んでいくと、地平線に虹のような明かりが広がり、やがて太陽が頭をのぞかせ、黄金色に輝く陽光を一直線に地上に伸ばす。「春は曙(あけぼの)」と清少納言は言うけれども、寒中の曙も情趣がある。

 日本海側に大雪が降り、乾燥した空気が太平洋側に流れ込むと、関東平野は北国の人には申し訳ないほどの快晴になる。早起きをして高台に立てば、虹色の曙に出合えるはずだ。

 きょうは小正月。各地でどんど焼きと呼ばれる火祭りが行われ、五穀豊穣(ほうじょう)、無病息災を神に祈願する。盛大な火祭りで新型コロナウイルス禍も追い出したい。無形民俗文化財のリストを見ると、豪雪地帯の福島県三島町の「三島のサイノカミ」など、ずらりと紹介されていた。サイとは、とりでの塞(さい)、境界の境(さかい)といった諸説があるが、地域の道祖神のこと。

 京都市山科区にある花山神社(かざんじんじゃ)は「伏見稲荷のお母さん神」とされるお稲荷さんだ。小正月には福を招く獅子舞が奉納され、鏡餅を使った善哉(ぜんざい)が参詣者に振る舞われる。

 神社の北方、東山の山頂付近に京都大学花山天文台がある。かつて天体物理学のパイオニアと言われた宮本正太郎先生が台長としておられた。京都での記者時代に50㏄のバイクで駆け上がり、お話を聞きにいったことがある。

 宮本先生は太陽コロナの温度が150万度以上と世界で初めて計算されたことで知られる。寒中の曙光に宮本先生の笑顔が重なり、きょうも良き日であるように祈った。