【社説】新年日本の課題 変化のうねり舵取り誤るな


新型コロナウイルス

 2022年が明けた。長引く新型コロナウイルス禍の中にあるが、新時代への大きなうねりは既に始まっている。それらは日本という国の存廃に直結し、世界の平和と秩序を左右する。確かな舵(かじ)取りで、創造的な歩みを強く踏み出す年にしたい。

 外交が国の命運を左右

 日本の課題は多岐にわたるが、当面は新たな変異株「オミクロン株」の影響で再拡大傾向にある新型コロナとの戦いに当たらねばならない。ワクチンの追加接種前倒しなど先手の対策で、医療の逼迫(ひっぱく)、経済活動の停滞を招かないようにすべきだ。

 経済、安全保障、社会生活に至るまで、国際情勢が影響する今日、外交政策が国の命運を左右することは明らかである。米中対立が深まる中、日本は北京冬季五輪に政府関係者を派遣しない決定をした。「外交ボイコット」は明言しなかったが、自由・人権を尊重する立場に辛うじて踏みとどまった。問題はその実質を示していくことだ。

 中国は軍備拡張、巨大経済圏構想「一帯一路」、さらには自国を起源とする新型コロナのパンデミックをも利用した「ワクチン外交」など、多角的な戦略で世界の覇権を狙っている。西側諸国はそれに対抗し得る対中戦略を構築し、日本は積極的役割を果たさなければならない。

 岸田文雄首相は「新しい資本主義」とともに「経済安全保障」に力を入れるとしている。科学技術は安全保障に直結する。スパイ防止法の制定も真剣に検討する必要がある。

 デジタル化や、脱炭素を推進する環境産業などで新しい成長産業を創造し、雇用を確保していくべきだ。世界はデジタル化や科学技術の革新によって大きく変化している。しかし、心と肉体からなる人間と幸福の基本、本質は変わらない。その根底にある家族の価値がそれら変化に翻弄(ほんろう)されてはならない。新設される「こども家庭庁」には確かな理念が必要だ。

 わが国では人口減少が進んでいることを忘れてはならない。その要因となっている東京への一極集中に政府は危機意識が薄い。防災の観点からも真剣に取り組むべきであり、首相が掲げる「デジタル田園都市国家構想」も、地方経済活性化を地方移住につなげるものとすべきだ。

 労働力不足になし崩し的な移民容認策で対応し続ければ、日本の国のかたちが変わってしまいかねない。ある程度の変化は避けられないにしても、変えてはならないもの、守るべき柱が何かを明確にする必要がある。

 皇位継承の真摯な議論を

 日本の国柄の根底にあるのは、国民と苦楽を共にする皇室である。その皇室は、代々男系男子によって継承されてきたが、現在皇位継承順位2位の悠仁殿下の代には、男子皇族がいなくなる恐れも出てきている。

 昨年末、皇位の安定的継承についての政府有識者会議が、戦後にGHQ(連合国軍総司令部)の圧力で皇籍離脱した旧宮家の男系男子が養子縁組を通して皇籍復帰する案を含む最終報告を提出した。今年、国会で具体的な議論が開始される見込みだが、これが日本の国柄そのものを左右するという認識の下、真摯(しんし)な議論が求められる。