米シンクタンク報告書 学術交流で軍拡図る中国


孔子学院閉鎖後も継続

 米国の大学では近年、中国の語学教育機関「孔子学院」の閉鎖が相次いだ。しかし、閉鎖後も中国の軍事開発を支援する同国の大学との間で学術交流協定を継続している米大学が多いことが米シンクタンクの報告書で明らかになった。米国の最先端研究が中国軍の近代化に利用されていることが懸念される。

米ワシントンのジョージ・ワシントン大学内にある孔子学院(山崎洋介撮影)

米ワシントンのジョージ・ワシントン大学内にある孔子学院(山崎洋介撮影)

 孔子学院は、これまで中国政府による宣伝工作や言論封殺に用いられていることが指摘されてきた。しかし、米保守系シンクタンク「民主主義防衛財団」が昨年12月に発表した報告書は、新たな問題に焦点を当てた。

 それによると、孔子学院を設置する際、米国の大学は、中国共産党が選択した中国の大学と学術交流協定を締結。これにより、中国の学生や学者が米国で研究することや最先端分野の研究協力が可能になっている。

 問題は、米国側の大学の多くは最先端の研究を行い、国防省など米政府から資金を受給して機密研究を行っているところが少なくないにもかかわらず、中国側の大学の多くは先端技術の軍事転用を推進する「軍民融合」戦略を担う大学であることだ。米国の最先端研究が中国の軍事開発に利用される恐れがある。

 米国における孔子学院の数は2018年に113あったが、米議会の規制強化などにより閉鎖が相次ぎ、現在では34まで減少した。だが懸念すべきことに、少なくとも28の大学は、閉鎖後も学術交流協定を維持、または拡大しているという。

 例えば、テネシー大学ノックスビル校は中国の潜水艦技術開発やサイバースパイ活動に関与する東南大学と、タフツ大学とウィリアム・アンド・メアリー大学は中国の無人航空機の開発計画などに関与する北京師範大学とそれぞれの学術交流を維持した。

 また、依然として孔子学院を設置している大学のうち、10校は中国で軍事関連の機密研究を行っている中国の大学と姉妹大学の関係にある。中でもスタンフォード大学やカリフォルニア大学サンタバーバラ校など四つは、北京大学や山東大学など中国の核開発計画を支援する大学と学術交流協定を結んでいる。

 報告書の著者で同財団研究員のクレイグ・シングルトン氏は、中国政府が孔子学院を「現代のトロイの木馬」として用い、「軍の近代化を支えるため米国の最先端研究を取り入れる意図があることは明白だ」と警告。議会に対し規制強化などの対応を求めている。

(ワシントン・山崎洋介)