【社説】臨時国会閉幕 感染第6波への備えを万全に


臨時国会が閉幕し、記者会見する岸田文雄首相=21日午後、首相官邸

 過去最大の補正予算を成立させた臨時国会が閉幕した。新型コロナウイルス感染拡大によって打撃を受けた経済と国民生活に対策を施すとともに、海外で大流行の勢いを増しつつある新型変異株「オミクロン株」による感染第6波への備えを万全に整えるべきだ。

 過去最大の補正予算成立

 一般会計の歳出総額が35兆9895億円の過去最大の補正予算の成立は、新たに22兆円の国債を発行し、国債残高が今年度末に1000兆円を超えると予測されることから、財政規律の緩みの面から批判も招いた。ただし、長期にわたる緊急事態宣言発令をもたらすコロナ禍によって国民が受けたダメージは計り知れない。“戦時並みの財政出動”と認識しなければならない局面なのではないか。

 補正予算の大部分を占める経済対策関連の31兆5627億円のうち、コロナ感染防止対策が半分以上の18兆6059億円だ。今のところオミクロン株対策には3回目接種による効果を期待するほかはなく、無料接種のさらなる体制整備と実施を急いでほしい。

 補正予算案策定前の衆院選では、各党ともコロナ対策を中心にした企業や国民への支援策を公約に盛り込んだが、これを矢野康治財務事務次官が月刊誌で「バラマキ合戦」と批判し、国内総生産(GDP)に対する債務比率は256・2%と戦時下を含めて最悪であると警鐘を鳴らした。国庫を預かる財務当局者の意見は貴重であろう。

 しかし、新型コロナが中国・武漢市で発生してパンデミックを引き起こした当時、世界の主要国の首脳らはまさに第2次世界大戦以来、遭遇したことのない試練になると表明した。実際、これまで世界で500万人を超える人々が犠牲となり、わが国でも1万8000人以上の死亡者を出している。

 オミクロン株もわが国で感染者が発見されており、英国などで認められる感染力の強さから、来年前半の第6波到来の覚悟と備えは緊急を要する。補正予算に反対した野党のうち立憲民主党は、コロナ対策に関しては第6波に備えた拡充を訴えた点で政府・与党と大きな違いがあるわけではない。

 ただ、立民は補正予算組み替え動議で指摘した「不要な予算」として、マイナンバーカードの普及のため最大2万円分のポイントを付与する「マイナポイント事業」経費1兆8134億円を挙げたが、諸対策の迅速化のためにマイナンバーカードは効果的だ。

 海外の給付金支給の早さや、スマートフォンを用いたワクチン接種証明の利便性と比べ、わが国はマイナンバーカードが普及せず後れを取っている。コロナとの共生が避けられない時代に観光をはじめとする経済活性化のためにも政府は働き掛けを強める必要がある。

 コロナ克服の政策競え

 昨年来、コロナ対策予算が漸次施される一方、国民の活動は停滞を余儀なくされたため貯蓄は増えている。与野党は、感染対策を施して消費を喚起し経済効果を得て、税収増加をもたらすコロナ克服の政策立案で競うべきだ。