【社説】各党代表質問 政策で切磋琢磨の原点に立て
臨時国会で岸田文雄首相の所信表明演説に対する各党代表質問が始まった。衆院選の結果を受けて政府・与党、野党第1党の立憲民主党とも新しい陣容で初の国会論戦が幕開けとなり、反対野党の印象が強い「野党共闘」と一線を画した議論となるか、今後の行方を見守りたい。
具体化促すアプローチ
立民の新代表に就任した泉健太氏は初の質問に立ち、党の立場として地域・国民に寄り添い、協助とともに公助が発揮される政府、国富の適正配分、オープンガバメント、国民側が政府をコントロールする政治、分権分散型、自由や多様性ある社会を目指すと訴えた。
従来の主張と大差はないが、前執行部までのような政権批判を繰り返す対決型の発言を控え、政策実現のためには相手の懐に飛び込んで具体化を促すアプローチが目立った。
特に結びで「政府与党よりもよい対案を提出し続ける」と訴え、また「与野党でやる気があるなら今国会で何らかの合意ができるはずだ」と協調路線を示唆したことは、「野党共闘」から現実的な是々非々路線への回帰がうかがえる。
泉氏は、首相が所信表明演説でも強調した「人に優しい新しい資本主義」を肯定的に捉え、そのためには「環境や人権、雇用への配慮を強力に進めるべきだ」と主張。正社員雇用を増やすために会社の社会保険料負担を軽減することや苦学生への給付型奨学金の拡充、省エネ対策では住宅の断熱基準を高めるなど提案を行い、首相も前向きな答弁をした。
一方、政府の新型コロナウイルス対策をめぐっては「遅すぎた救助隊」と揶揄(やゆ)し、「無料検査が遅すぎる」などと対応を批判。水際対策の隔離期間を一律「10日間」に徹底することや、18歳以下への10万円給付金を半額現金、半額クーポンとする政府の方針を見直すよう求めた。
また、岸田内閣に人権担当首相補佐官が新設されたことを受け、「日本版マグニツキー法」制定を呼び掛けた。海外の人権侵害を行った団体や個人に対して経済制裁などを科する同法制定については、とりわけ中国の人権弾圧が国際問題となり、日本の行動も注目されている。
首相は「人権はじめ普遍的価値を守る」として「超党派の議論を見守り検討する」と答弁したが、親中派の影響が根強い自民・公明の与党に対して、強く働き掛けることが野党第1党の役割となろう。
憲法審査会での議論について泉氏は、「憲法の在り方に真剣に向き合え」と要望し、議論には応じる構えを示した。憲法改正に前向きな発言をする首相を批判し「改正のための改正には与(くみ)しない」と述べた西村智奈美幹事長に認められる慎重論が党内で支配的とみられるが、審査会審議を止めてきた過去の野党の姿勢は改めてほしい。
新たな与野党関係を
この日、立民は定期的に行ってきた野党国対委員長会談を廃止することを馬淵澄夫国会対策委員長が発表した。今後、立民が与党と協力する政策テーマも増えると予想される。政策で切磋琢磨(せっさたくま)する新たな与野党関係を築くべきである。