「沖縄の人々は先住民族」国連勧告に待った!

 国連の人権を扱う機関が沖縄県民を先住民族として認めるよう日本政府に勧告していることに対し、異議を唱える沖縄県の地方議員が議連を結成し、県と県議会に対し、勧告の撤回を求めるよう要請した。(沖縄支局・豊田 剛)


撤回求める地方議員連盟が発足、玉城知事に無効宣言要請

 「沖縄の人々を先住民族とする国連勧告の撤回を実現させる沖縄地方議員連盟」(会長・崎浜秀昭本部町議)が11月22日に発足した。沖縄県民の知らないところで日本と沖縄を切り離そうとする動きに危機感を募らせた市町村議員8人が議連を立ち上げた。来年末までに、県内全41市町村議会で、国連勧告の撤回を求める意見書の採択を実現することを目標とする。

 「(沖縄の)文化遺産および伝統的生活様式を保護し、保存し、促進し、彼らの土地の権利を認めるべきだ」。2008年、国連の人権規約委員会は日本政府宛てに、沖縄の人々を先住民族として認め、土地や言語の権利の保護を求める勧告を提出した。国連人種差別撤廃委員会も先住民族の承認を求める見解を14年9月と18年8月に出している。

 議連は6日、沖縄県庁を訪ね、知事宛てに①国連勧告が出された経緯の調査と広報の実施②再発防止策の実施③国連勧告の無効宣言の実施――を求める要請文を提出した。

「沖縄の人々は先住民族」国連勧告に待った!

記者会見で先住民勧告の問題を指摘する崎浜秀昭会長(右から2人目)=6日、沖縄県庁記者クラブ(豊田剛撮影)

 同日の記者会見で崎浜会長は、「沖縄県民は自分たちが先住民族という認識は持っていない」とした上で、「県や県議会のプロセスを経ずに県民が知らないうちに国連勧告が行われていることは議会制民主主義の否定だ」と強調。「知事が明確に否定しなければ、国際社会から沖縄の人々が先住民族だと認識されてしまう」と危機感を示した。

 議連の事務局となっている一般社団法人日本沖縄政策研究フォーラムの仲村覚代表は、「沖縄県が来年、日本復帰50年を迎えるこの節目で、玉城知事が沖縄県民を先住民族にしようとしているのか、そうでないのかを明確にする必要がある」と述べた。

「沖縄の人々は先住民族」国連勧告に待った!

議員団から陳情を受け取った赤嶺昇沖縄県議会議長(中央)=11月22日、沖縄県議会(豊田剛撮影)

 議連はそれに先立ち、同様の陳情書を赤嶺昇県議会議長に手渡した。赤嶺氏は開会中の議会定例会で「委員会審議にかけたい」と述べ、取り扱いに前向きな姿勢を示した。

 玉城知事は県議会の一般質問で「沖縄県全体として議論されておらず、知事として意見を述べる立場にはない」と消極的な姿勢を示した。花城大輔県議(自民)は、「先住民族勧告について反論できる立場にあるのは知事しかいない」と強調。来年、沖縄の日本復帰50年を迎えるのに合わせ「先住民族の問題を整理すべきだ」と訴えた。

 呉屋等宜野湾市議によると、宜野湾市議会は19年12月に、先住民族勧告の撤回を求める意見書を採択し、玉城知事に提出したが、知事からいまだに反応がないという。議連はその回答も求めている。


知事宛て要請文の要旨 県議会で一度もない先住民族決議

 2008年、国連の自由権規約委員会から日本政府宛に沖縄の人々を先住民族として公式に認め、その土地や言語の権利を保護するようにとの趣旨の勧告がなされ、日本政府は否定したが、その後も同様の趣旨の勧告が人種差別撤廃委員会と合わせて、合計5回も出されている。日本政府が否定しても、繰り返し同様の勧告が提出され続けるということは、国連は現在、沖縄の人々は先住民族だと完全に誤解をしてしまっていることを意味する。

 ほとんどのウチナーンチュ(沖縄の人々)は、日本人としての自己認識を持って生きており、過去においても沖縄人民党の瀬長亀次郎氏はその著書「沖縄からの報告」(岩波書店)の中で「日本国民」として生きる道を見つけ出すよう呼び掛けている。

 国連がウチナーンチュは先住民族だと断定し、自己認識の変更を求めるような勧告を出す前に、沖縄の地方議会や公開された民間の場でしっかりと議論されるべきだ。ところが、沖縄県議会では、これまで、先住民族として認めるよう求める意見書や決議文が可決されたこともない。

 県内外に住むほとんどのウチナーンチュはこの勧告が出された事実を知らない。さらに、誰が、いつ、どのような権限でウチナーンチュを先住民族と断定し、どのような資格で国連に働き掛けたかも知らされていない。

 知事には、沖縄の議会制民主主義の存在意義が問われる重大な事件だという危機認識を持ってもらい、こうした危機的状態を一日でも早く脱し、県民の不安を払拭するよう求める。