【社説】泉立民新代表 党再建へ気概持ち新風を


新代表に選出され壇上で手を振る泉健太氏=30日、東京都内(森啓造撮影)

 衆院選敗北の責任を取って辞任した立憲民主党の枝野幸男前代表の後任に、泉健太氏が決選投票の末、選出された。閣僚経験もなく全国的な知名度は低いが、野党第1党の顔として来年の参院選に臨むことになる。「政権交代の受け皿となる」ことを目指す以上、枝野路線を反省し党再建への気概を持って指導力を発揮すべきだ。代表選は論戦の盛り上がりに欠けたが、「政策提案型」を掲げる泉氏は自らのカラーを出し、国会に新風を吹き込んでもらいたい。

 共産共闘清算が課題

 今回の代表選は、党として衆院選の総括をしないまま実施されたため、共産党との共闘の是非や重要政策での違いなどが浮き彫りにならなかった。候補者たちは波風を立てないような姿勢に終始するなど生ぬるさが目立った。

 泉氏に投票した国会議員、党員・サポーターらは、47歳という若さと政調会長を務めた政策通としての力量に期待したのだろう。泉氏は、保守・中道系の若手リーダー格である。安倍・菅政権に対抗意識をむき出しにした「政権批判一辺倒」とされる枝野型から脱し、政策の提案を重視し議論を深める党風に転換したい意向のようだ。

 そうであれば、新型コロナウイルス対策や経済再生策といった緊急課題に対処するだけでなく、「政権交代」を前提とした中長期的なビジョンや国家像を取りまとめ発信することも必要である。敗北した3候補者もこれで終わりというのでなく、新執行部の中で協力し挙党体制の構築に尽力すべきだ。

 枝野体制による負の遺産を清算する課題も控えている。先の衆院選で共産党と合意した政権獲得後の「限定的な閣外協力」を含めた共闘を今後も続けるのかについて、泉氏は代表選であいまいだった。代表選後の会見では「衆院選に向けて交わしたもので現時点で何かが存在しているということでない」と、一歩進めて語った。ただ「党として総括する」とも述べたが、関係を継続するのかしないのか定かでない。

 衆院選敗北の主な原因の一つは、立民が外交・安全保障など国家の根幹に関わる重要政策や理念よりも「数の論理」を優先させて共産と手を組んだことが、国民の支持を得られなかったことにある。日米同盟の継続を掲げる立民と日米同盟廃棄が党是の共産との共闘が否定されたのは明らかである。

 共産の小池晃書記局長は「選挙の任期が続く限りは、それは順守する責任がある」と述べ、継続を求めたが、枝野路線は国民からノーを突き付けられたのである。泉氏や新執行部はその深刻な過ちを認識しなければならない。後で党が総括すると先送りをし、共闘関係から決別できないようでは、衆院選でぎくしゃくした国民民主党や支持母体の連合との関係を修復できないし、党を刷新することは不可能だ。

 建設的な立民見たい

 臨時国会が6日に開幕し、令和3年度補正予算案などが審議される。憲法審査会などにも積極的に参加し、建設的な議論のできる泉・新立民を見せてもらいたい。