緊急事態延長 収束へ緊張感持続させよう
新型コロナウイルス対策で21都道府県に発令されている緊急事態宣言が、宮城、岡山両県を除く19都道府県で30日まで延長される。11月のワクチン接種完了を念頭に行動制限緩和への動きも起きているが、感染収束が見えてくるまで緩みは禁物だ。
重症者数は依然高水準
新規感染者は減少傾向にあるものの、19都道府県で重症者数は依然高い水準が続いており、医療提供体制はなお厳しいと政府は判断した。宣言地域では、飲食店での酒類提供一律停止などの対策を継続する。
福島、石川など12県に発令されたまん延防止等重点措置も30日まで延長されるが、富山など6県で解除される。新たな基本的対処方針では、飲食店の感染対策を評価する第三者認証制度の普及を踏まえ、知事の判断で午後9時までの営業、午後8時までの酒類提供が可能となる。
高齢者の感染が減り、重症化する人が少なくなるなど、ワクチン接種の効果は明らかだ。ただ、世界的傾向として表れている接種者の「7割の壁」をどう突破するか。政府や自治体は若い世代への接種の加速にさらに力を注ぐ必要がある。
新型コロナとの戦いはワクチン接種と感染対策を2本の柱としてきたが、ワクチンと治療薬の併用が効果的なことは明らかだ。医療提供体制の逼迫(ひっぱく)を防ぎ、重症者、死亡者を減らすには、抗体カクテル療法を早い段階で受けられるようにすることが求められる。インドなどで効能が明らかとなっているイベルメクチンの普及も推進すべきだ。
政府対策本部は、ワクチン接種の進展を見据え、行動制限の緩和に向けた「基本的方向性」も決定した。希望者全員にワクチン接種が完了する11月ごろを念頭に、接種証明やPCR検査などの陰性証明を活用し、緊急事態宣言下でも飲食店の酒類提供や県をまたぐ移動を容認。大規模イベントの人数制限も緩和する。制限緩和は段階的に行い、「国民的な議論を踏まえ具体化を進めていく」としている。
度重なる緊急事態宣言の発令や延長で先が見えない中、大きなダメージを受けている飲食業や観光業者などに募る不満と不安を少しでも払拭(ふっしょく)しようとの政府の狙いは分かる。また、ワクチン効果に一定の限界もあることから、今のうちに、ある程度の感染の広がりの中でも日常生活を正常化させていく方向も示す必要がある。
ただ、これで収束が見えてきたとの誤ったイメージを国民が持たないよう注意すべきだ。希望者全員へのワクチン接種が前提であり、11月ごろを目途にしていることをよく周知することが求められる。
冬に向け医療体制整備を
現在の「第5波」が落ち着いても、冬に向かって再び拡大する可能性もある。新たな変異株が出現し、ワクチンの効果が弱まる可能性もある。その場合にも医療体制が逼迫しないようにしなければならない。田村憲久厚生労働相は分科会で「冬場に向かってどうやって医療提供体制をさらに整備していくかが、非常に重要だ」と強調した。これまでに浮き彫りになった医療体制のさまざまな問題点も改善し体制を整えてほしい。