公明党の対立軸、連立内で強まる対自民意識
識者らが「右寄り」と批判
自民と連立を組む公明党は「対立軸」の用語は使わないが、「大衆とともに」(立党精神)などの理念で存在感を示そうとしている。同党機関誌「公明」3月号に「公明党結党50周年に寄せて」書いた西澤潤・早稲田大学名誉教授は「公明党は、清潔な政治、大衆福祉、人間主義、中道思想を掲げて登場し」、「大衆、庶民の立場を踏まえて、人間=中道主義、また、大衆福祉の思考と政策を政治に反映させる主軸となってきた」と述べている。
また、巻頭記事「『議員力』アップで新たな衆望を担う―政策力、発信力、拡大力、現場力を磨こう」には、タイトル通りの誓いを「1年後の結党50周年に向けて」なすとした。ここで認められるのは、大衆、庶民、人間主義、議員力、衆望、庶民の立場など人的要素が強調されていることだ。
公明党の政策は民主党に近いと言われながら、自公連立後は政策的な対立軸で連立の組み替えは起きなかった。先述の「『議員力』アップ―」の記事には「かつて3年3カ月の民主党政権時代に、失政の要因の一つとして民主党議員による口先だけの“言いっぱなし症候群”が挙げられたことは記憶に新しい」との民主党批判がある。これは政策でなく人的要素を問うていると言えよう。
護憲野党として出発した公明党は、1993年に反自民非共産の細川護煕連立内閣に参加。その後、一度は党を解散して94年12月に新進党に合流し、野党再編過程でいまの民主党と半ば同じ流れにあった。しかし、同党から分党し98年に公明党を再結成、99年に自民党と連立を組んだ。政策的にはハードルが低かった反自民非共産の枠組みは5年で脱け出て、政策差がより高い自民との連立・連携は15年に及ぶ。
が、公明党が連立内で政策的な対抗意識を膨らませているのも事実だ。同誌で西澤氏は「アベノミクスの視野には、グローバリゼーション下で増えつつある不正規就労者、『弱者』化される若者・女性・中高齢者…への目配りが欠けている」、「安倍首相はまた、憲法改正、集団的自衛権、特定秘密保護法、靖国参拝、尖閣等の領土問題等、国家主導型の『こわもて』ナショナリズムを強めることによって、世界的に進行しつつある変動に対処しようとしているようである」など、批判を加えた。
また、藪野祐三・九州大学名誉教授の「戦後日本における政党政治の軌跡」と題する記事では、「安倍政権は、岸元首相の抱いていた憲法改正、集団的自衛権の確立、多国籍軍への参加を目指す右寄りへの復活でもあろう」、「野党を経験したことによって……自民党的イデオロギーを純化させる回帰を果たしている」など自民の政策に対抗心を覗かせた。
連立での「与党内野党」を自任する公明党だが、安倍首相が日本維新の会など改憲野党を評価することで政策矛盾を刺激されているのかもしれない。政治的に成熟した「議員力」も試されよう。
解説室長 窪田 伸雄