民主党の対立軸、能力主義的な競争をせよ
政策純化は増勢保証せず
民主党の機関紙「プレス民主」は自民党との対峙(たいじ)・対立を強調する。「自民党政治にしっかり対峙できる勢力」(1月17日号、海江田代表年初記者会見)、「自民党との対立軸を鮮明に」(2月7日号、民主党への提言・篠原文也氏)など、党首が強調し、識者が呼び掛けている。
政治解説者の篠原氏は「公平、公正、共助という、ヨーロッパでいえば中道左派路線をしっかり固め、そこに特化していく」よう求め、さらに「対立軸の下に結集できる人だけで純化していく」ことを訴えた。
識者が「中道左派路線」など対立軸を政策に求めるのは、政策選挙を意識するためであろう。民主党結党の背景となった衆院小選挙区比例代表並立制度の導入は、同じ政党の候補同士が争う中選挙区制度の弊害を除き、選挙を政党間の政策選挙にするのが目的の一つだった。
篠原氏はまた、党内純化のため現職も含めた公認手続きで、「党の政策をしっかり提示し……踏み絵を踏ませ」ることを提案した。
「数を絞り込むことになるかもしれ」ないが、「それが最終的には党を大きくする」というのだ。昨年の同紙6月7日号では、ノンフィクション作家の吉永みち子氏も「一番の再生への近道は、一度もっと小さくなることじゃないか」と言ったのである。党内純化のため離党や分裂を厭(いと)うなということだ。
しかし、小選挙区制で二大政党化したとはいえ、自民に対峙する一翼が民主党の指定席とは限らない。新勢力台頭の可能性もある。また、社民党が水と油の自民との連立後、日米安保条約廃止など党政策の純化を土井たか子、福島瑞穂党首の下で進めたが、一度小さくなったらさらに小さくなった。政策とともに選挙で淘汰(とうた)されたこともあるが、政党が小さくなるとマスコミが取り上げる頻度も減り、注目度・知名度とも下がる理由もあろう。
最近の政党支持率を見ると、時事通信2月の調査によれば自民24・7%、公明3・6%、民主3・0%、共産1・9%、日本維新の会1・7%、社民0・6%、みんなの党0・3%、結いの党0・2%、生活の党0・2%、新党改革0・0%だった。分裂のうえ選挙で小さくなった民主党は3%台の低支持率が続き、生活の党は0%に近い。みんなの党は分裂以前の昨年11月は1・6%だったが、これを2で割るより小さい数字に結いの党との分裂のあと互いに落ちた。
むしろ党の器を広げ、異なる意見や考えをまとめる調整力、政治能力という人的要素の対立軸もあり得るのではないか。相手の党の経済政策が2%成長ならこちらは3%成長できる、相手の党よりわが党には外交力があるなどの実力や根拠を示し、能力主義で政治の競争をしてほしい。
解説室長 窪田 伸雄