日韓首脳対話 関係改善は文氏の姿勢次第


 菅義偉首相は先進7カ国首脳会議(G7サミット)が行われた英南西部コーンウォールの会場で、韓国の文在寅大統領と短いあいさつを交わした。首相就任後、対面で文氏と直接言葉を交わすのは初めてだったこともあり、高い関心を集めた。だが会談には至らず、関係改善のきっかけもつくり出せなかった。

 韓国への不信感続く

 両首脳のやりとりは文氏が菅首相に歩み寄り、互いに「会えてうれしい」という簡単なあいさつをして終わったという。

 文氏は初対面について自身のツイッターに「韓日関係において新たなスタートになり得る貴重な時間だったが、会談に至らず残念」と記した。

 隣国であるだけでなく、民主主義と市場経済という共通の価値観を共有してきた国同士の首脳であることを考えれば、あいさつだけして会談しなかったというのは異例と言えよう。

 問題は会談が実現しなかったこと自体ではなく、実現を阻んでいる原因だ。文氏は2017年の就任以来、反日路線を政権の基盤固めに利用してきた。それは日本に韓国への強い不信感を抱かせ、今なお続いている。

 両国政府は15年に慰安婦問題をめぐり「最終的かつ不可逆的な解決」を確認したはずだったが、その後、文政権は合意を事実上反故(ほご)にした。韓国大法院(最高裁)は18年、保留にされていた元徴用工訴訟の判決で日本企業に賠償命令を下し、請求権の消滅などで合意した1965年の日韓請求権協定を事実上否定した。

 これらは文氏が国内政治向けに容認したものだったかもしれないが、日韓関係の土台を揺さぶる行為だった。繰り返し是正を求める日本に対し、韓国は正面から向き合うことを避けた。ところが菅首相が就任すると、韓国は手のひらを返すように日本との関係改善に動きだした。日本が真意を測りかねたのは当然だ。

 任期末を迎え、支持率が低迷し、来年の大統領選の行方も不透明になる中、文氏は政権浮揚へ北朝鮮との融和を再び実現しようと考えていると言われる。北朝鮮の金正恩総書記が望んでいる米国との直接対話や、それに連動する南北関係改善には、日本との関係改善が欠かせないと判断しているようだ。

 そうした政治的目的を達成すために対日融和に舵(かじ)を切ったとしても関係改善は進まない。文氏の言う「新しいスタート」とは何を指すのだろうか。

 韓国の一部メディアは、韓国外務省当局者の話として、G7サミットに合わせ日韓首脳会談を実施することで暫定合意したものの、日本側が一方的にキャンセルしたと報じたが、日本政府は事実無根だと否定し、韓国側に抗議した。

 対中連携で日韓関係改善を願う米国を意識し、事実を歪曲(わいきょく)して会談不発の責任を日本に転嫁したとすれば、稚拙と言わざるを得ない。

 訪日するならば誠意を

 来月の東京五輪開幕式に合わせた文氏訪日の可能性が取り沙汰されている。

 文氏は首脳会談を望むのであれば、関係改善に向け誠意を示すべきだ。