中国人権侵害 国会で全会一致の非難決議を
ミャンマーで起きた国軍による軍事クーデターを非難し民主主義体制の回復を要求する決議を衆院が採択した一方で、中国共産党政権による新疆ウイグルや香港、チベットなどでの人権侵害を非難する国会決議は採択に至っていない。一党独裁の支配を強めるため少数民族を弾圧し、民主派を逮捕し、宗教迫害を続けることは容認できないと示すべく、一刻も早い国会決議を望みたい。
公明党が採択に反対
衆院が決議したミャンマー国軍への非難決議は「現体制の正当性は全く認められない」としてクーデターを厳しく批判。デモ鎮圧における実弾発砲で多数の死傷者が出ていることやデモ参加者の拘束・逮捕、行方不明など残虐な暴力行為の即時停止、軟禁されたアウン・サン・スー・チー氏の即時解放を要求している。
国軍の行為は昨年11月の総選挙でスー・チー氏の率いる国民民主連盟(NLD)が圧勝した結果を武力で踏みにじったもので、非難決議は当然だ。今後のわが国の姿勢も注目されるが、欧米ではすでに制裁措置を取っているものの、政府は「強く非難する」などの外相談話にとどまっている。それでは不十分であろう。
国会では超党派の議員連盟が、中国が香港の「一国二制度」を無視し、国家安全維持法を全国人民代表大会で昨年6月に制定して香港に適用するなどの国際法違反を問題にし、立ち上がった。
外国での人権侵害に制裁を科す米国のマグニツキー法を参考にした「人権侵害制裁法案」の議員立法を進めるのと併行して、中国の人権侵害を非難する国会決議も検討されてきた。
しかし、先行して3月から議論されてきた対中非難決議に、5月に立憲民主党の提案によって検討に加えられたミャンマー国軍への非難決議だけが衆院で採択されたのは、与野党の中で公明党が中国の人権侵害に対する非難決議に賛成しなかったからだ。
公明党は結党当時から中国共産党との関係が深い。また1960年代から70年代にかけて、中国共産党も日本と台湾(中華民国)を断交させ日中国交を締結するための対日工作の足掛かりとして公明党に一目置いた経緯がある。
だが、日中関係を重視したとしてもウイグル族やチベット族、モンゴル族、香港民主派への人権侵害を容認するわけではあるまい。公明党は、人権侵害に関する対中非難国会決議を止めるべきではない。
国際的連携が不可欠
特に、新疆ウイグルで100万人以上のウイグル族を強制収容するなどの弾圧に対して、米国、カナダ、オランダなどが国際法上のジェノサイド(集団虐殺)に当たると認定しており、米国、英国、カナダ、欧州連合(EU)が3月に一斉に中国に制裁を発動している。
巨大な中国を相手にするには、国際的連携が不可欠だ。引き続き超党派で中国の人権侵害に対する国会決議の全会一致による採択に向けて真摯(しんし)に協議し、また外国の人権侵害に制裁を科す法整備を急ぐべきだ。