北方領土大会 首相、交渉「着実に進める」
アピール文で“不法占拠”復活
菅義偉首相は7日、東京都内で開かれた北方領土返還要求全国大会にビデオメッセージを寄せた。ロシアとの北方領土交渉について「私の内閣でも2018年のシンガポールでの(日露)首脳のやりとりはしっかりと引き継いでおり、これまでの両国間の諸合意を踏まえて、今後も着実に交渉を進めていく」と述べた。
新型コロナウイルス感染拡大のため一般の参加なくインターネットを活用して開催された大会では、「法的根拠のないままに75年間占拠をされ続けていることは誠に遺憾」との文言を含んだアピールを採択。18年の合意以降、首脳間交渉に配慮し2年連続で避けてきた「不法占拠」の表現が事実上復活した形だ。
18年の首脳間合意は、平和条約締結後に歯舞、色丹の2島を引き渡すと明記した1956年の日ソ共同宣言を基に交渉を加速させるとしたもの。首相は昨年9月、就任後初のプーチン大統領との電話会談で、この合意を再確認するとともに早期に対面形式の会談を目指すことで一致した。日本政府は18年の合意以降、記者会見や国会答弁で「日本固有の領土」「不法占拠」といった言葉を避けている。
これに対し、ロシアは合意後、むしろ強硬姿勢を強めている。9月の首脳会談の際は当日、ロシア軍が北方領土を含む地域で軍事演習を実施。前首相のメドベージェフ安全保障会議副議長は、昨年7月発効の改正憲法に明記された「領土割譲禁止」を根拠に、北方領土の返還は「不可能」と主張し、最近のロシアメディアとの会見では日本側の主張を「お題目」とまで表現した。ロシア側に日本の手詰まり感を見透かされているのが現状だ。
昨年は新型コロナの影響でビザなし交流や元島民の墓参など交流事業が全て中止された。コロナ収束後の確実な再開のため、国内世論結集に向けた啓発活動のさらなる強化が求められる。