日本学術会議 非政府組織化含め徹底検証を
自民党は、内閣府の特別の機関である日本学術会議の在り方を検証する「政策決定におけるアカデミアの役割に関する検討プロジェクトチーム(PT)」の役員会を初めて開いた。学術会議の改革は以前からの宿題であり、今回、会員候補6人の任命を菅義偉首相が拒否したことで改めて浮上したものだ。
政府は行政改革の対象とする方針だ。非政府組織化も含め徹底的に検証すべきである。
最後の「勧告」は10年前
学術会議は占領下の1949年に設立された。科学の向上発達を図り、行政、産業および国民生活に科学を反映浸透させることを目的とする組織である。日本学術会議法は「科学を行政に反映させる方策」などに関し、政府に「勧告」できるとしている。年間10億円の国費が充てられ、会員は特別職の国家公務員である。
ところが「勧告」は2010年8月、科学技術基本法の見直しなどについて行われたのが最後となっている。また、政府の諮問に対する答申も、07年5月の災害対策に関するもの以来、諮問がなかったため行われていない。10億円の国費を投じることの妥当性が問われる。「提言」は3年間で80件以上出されているが、その質や有効性も検証の必要がある。
一方、学術会議は17年、1950年と67年の声明を継承するという文言を含む「軍事的安全保障研究に関する声明」を発表。軍事目的の研究を禁止した。
インターネットやGPSなどを挙げるまでもなく、科学技術が軍事研究と共に発達し民生に役立っている現実を無視した声明で、学問の自由を自ら制限するものに他ならない。任命拒否問題で「学問の自由の侵害」と騒ぎ立てるのは、明らかに矛盾している。親共産党の会員の活動によるものだが、こうした姿はかつて左翼学生運動の過激化で荒廃した60年から70年代の大学を思い起こさせる。
左翼学生たちは学問の自由を守るための「大学自治」の建前があるキャンパスに、公安関係者や警察機動隊が立ち入りできないのをいいことに、大学を暴力的な活動の拠点としてきた。紛争が続く大学は荒廃し、一般学生の学ぶ機会を奪った。
当時の大学の荒廃、学問の衰退の責任は、左翼学生たちに同情的なマスメディアや、毅然(きぜん)とした態度をとれず、跳梁(ちょうりょう)を許した大学人全般にもある。同様のことが学術会議で起きているのではないか。
学術会議の梶田隆章会長は菅首相と会談し、6人の任命拒否理由を問い、速やかな任命を求める要望書を手渡した。しかし任命責任を持つ首相が、国益の観点からふさわしくないと判断し拒否するのは当然で何の問題もない。むしろ、おかしな前例を打破したことは評価すべきである。
軍事研究禁止の釈明を
梶田会長は「学術会議は昔に比べて政策決定にも重要になってきている」と述べたという。それならば、なぜ国際環境や社会が激変しているにもかかわらず、軍事研究に関して旧態依然の態度を続けるのか、「勧告」が10年間出ていないのか、釈明する責任がある。