菅自民党新総裁 強靭な意志で国造りを
安倍晋三首相の退陣表明を受けた自民党総裁選で、菅義偉官房長官が圧勝し、第26代総裁に選出された。16日の首班指名を経て自らの内閣を発足させる。
菅氏は「安倍政権の継承」を掲げたが、首相の志半ばとなった憲法改正に向けて、強靭(きょうじん)な意志を持って国造りをスタートしてもらいたい。
大きな壁を崩せるか
総裁の交代は約8年ぶりとなる。主要派閥が雪崩を打って菅氏支持に動いたことから、党内基盤は基本的に安定しよう。ただ、流れを作ったと自負する各派閥から論功行賞人事を求められている。実務型のリーダーとして危機管理や省庁間の調整などで能力を示してきた菅氏だが、党役員や閣僚の人選で力を発揮できるのか注目したい。
菅氏は「自民党の旗の下に一致団結し、この日本の国を前に進めよう」と呼び掛けた。まず直面する政策課題が、新型コロナウイルス対策と傷んだ経済の再建だ。
菅氏は当選後「国難にあり、政治空白は許されない」とし、同対策について安倍首相の取り組みを継承し進めていく考えを強調した。中小企業や国民に対する給付金の再追加など緊急の積極策が求められよう。
目指す社会像について「自助・共助・公助、そして絆」を挙げ、役所の縦割り、既得権益、悪(あ)しき前例主義を打破して規制改革を進める姿勢も示した。官邸の意向に従わない官僚を冷遇してきた手腕を評価する声もあるが、眼前に立ちはだかる大きな壁を崩せるのかが問われる。
懸念されるのは外交だ。「日米同盟を基軸としアジアの国々としっかり付き合うのが大事だ」というのが持論だが、米国と中国による新冷戦が激化する中、日本はどのような位置に立つのか。行き詰まっている北朝鮮による邦人拉致問題の解決も必要である。
安倍首相が退陣を前に発表した「ミサイル阻止に関する新たな方針」という安全保障政策をめぐる談話も宿題として残された。首相は抑止力を増強するために敵基地攻撃能力保有の必要性を強くにじませたが、公明党と協議し今年末までにあるべき方策を示すことになっている。
問題は、消極的な公明党を説得できるかだ。菅氏は、二階俊博幹事長と共に安倍首相に代わって政策面や選挙対策で公明党と良好な関係を築き政権を支えてきた。重要政策で妥協し、自民党らしさを失うことがあってはならない。
憲法改正も同じだ。妥協の繰り返しでは安倍路線を継承できない。菅氏は4項目を指摘して「挑戦する」と述べた。衆参両院の憲法審査会で野党の積極的な議論参加を促す考えも示した。促すことも大切だが、議論の場にどう参加させるかの知恵が必要だ。改憲を宿願とした安倍首相に匹敵する気概と情熱を持って対処してほしい。
肝胆を砕いて断行せよ
菅氏の座右の銘は「意志あれば道あり」という。
肝心なのは総裁、総理にたどり着いた先の道をどう切り拓(ひら)いていくのかだ。緊急を要する課題が多く前途は厳しいが、肝胆を砕いて諸改革を断行すべきである。