国会最終盤 対中国政策で集中審議を


 日本や米国はじめ各国が新型コロナウイルスへの対応に追われる間隙を突き、中国が「コロナ後」の海洋覇権拡大を狙い、わが国の領海侵犯をより強硬に行うようになった。南シナ海でも挑発的な行動を活発化させ、日米主導の「自由で開かれたインド太平洋構想」は新たな試練を迎えている。

「コロナ後」の基軸確認

 国会は最終盤に入り、2020年度第2次補正予算の成立に向けた議論などに多くの時間が割かれているが、米中関係が急速に悪化している中で、わが国の外交、安全保障戦略についても早急に議論する必要がある。今からでも、中国とどう向き合っていくかに関する集中審議を開催すべきである。

 中国による尖閣諸島(沖縄県石垣市)沖の領海侵犯は過去、何度もあったが、5月8日からの行動は特異だった。侵入して日本漁船を追尾し、一度は領海外に出たが再侵入して追尾・監視した。しかも、中国外務省は日本漁船が「中国の領海内で違法な操業をした」とし、新たな問題を起こさないよう逆に日本政府に警告してきたのである。

 懸念すべきは、日本漁船への追尾・威嚇という段階から実力行使という中国の主権・管轄権の行使に出てくる兆候が見られることだ。仮に中国海警船の海上保安庁巡視船に対する意図した衝突あるいは武器の使用が行われると、わが国には対応策がない。海保の任務は「秩序の維持」であり、領土・領海の防衛ではないからだ。自衛隊の防衛出動にも法律上の限界がある。

 中国はまた、南シナ海での実効支配を強化する動きに出ている。南沙、中沙、西沙諸島を管轄する行政区を設置。これらの地域を埋め立て、滑走路を造りミサイルを配備するなど軍事化を推進中だ。空母の編隊が台湾南方のバシー海峡を通過し南シナ海で訓練を行ったが、この海域はオイル輸送で重要なわが国のシーレーン(海上交通路)で、安定化が不可欠である。

 ところが、わが国の対中国姿勢は極めて甘い。新型コロナ感染拡大の原因を問いただし責任を求める姿勢は見られない。習近平国家主席の国賓来日についても「意思疎通を図っていきたい」として再調整する意向だ。

 東西冷戦時代に日本は米国と共に西側陣営でソ連に対峙(たいじ)したが、米中の衝突が激化する今日の新冷戦時代にあって中途半端な姿勢でいいはずがない。日本の安全保障が脅かされている今こそ、自由、民主主義、人権の尊重という基本理念を共有する米国との同盟を質的に深めて南西諸島防衛を強化し、日米共同対処体制を拡充することが必要なはずだ。

 米国の協力がなければ北朝鮮による拉致問題の解決も進まないだろう。この方向性の明確化と外交基軸の確認は「コロナ後」を念頭に早急に行われるべきではないか。

与野党が戦略の議論を

 国会の委員会などでは単発的に中国に対する見解が述べられているが、まとまった議論はしていない。

 時間がなければ会期を延長してでも与野党が集中審議をし、わが国の取るべき戦略を確立すべきである。