年800万㌧流出の海洋プラごみ問題
政府 途上国含め対策呼び掛け
世界中で海洋プラスチックごみ問題への関心が集まる中、環境省は来月から主な排出国とされる東南アジア諸国に対してごみの測定方法や再生利用などの技術移転に取り組むと決定した。ほかにもレジ袋有料化の動きやマイクロプラスチックの流出抑制対策などに取り組む方針だ。政府は日本がホスト国となる6月28、29両日開催の大阪20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)で主導権を発揮するためにも、海洋ごみ削減への取り組みを強化している。(政治部・岸元玲七)
大阪G20で米引き込みが課題
今月中旬、フィリピンの海岸に打ち上げられたクジラが死亡し、地元の漁業当局などが調査した結果、胃の中からはレジ袋や米袋などのプラスチック約40㌔が見つかった。これらのごみのせいでエサが食べられず、餓死したとみられる。2015年に米科学誌「サイエンス」に掲載された米大学チームの研究論文によると、毎年少なくとも800万㌧のプラスチックが海に流れ込んでいる。発生量の国別ランキング(2010年推計)では、1位中国、2位インドネシア、3位フィリピン、4位ベトナムと続く。海洋流出プラごみの約6割は、1~4位の国々にタイを加えたアジア5カ国から排出されているという。このままの状態が続くと、2050年には海洋ごみの重量が魚の量を上回るとの試算が報告されている。
「東南アジアを含めたアジア近隣諸国の連携を含め、海洋プラごみの全体的削減に向けて推進していきたい」。原田義昭環境相は15日の記者会見でこう述べた。東南アジアに対しては海洋ごみの量や流出経路など実態把握のための技術支援や、再生利用などの制度・技術的なノウハウを提供する予定だ。
海洋プラごみ問題を取り巻く国際的な動きは、ここ数年で急速に進展している。15年6月のドイツ南部エルマウで開かれた先進7カ国(G7)サミットで海洋ごみが世界的課題だと初めて提起。17年G20ハンブルクサミットでは、「G20海洋ごみ行動計画」の立ち上げに合意した。そして昨年6月のG7カナダ・シャルルボワサミットでは、達成期限付きの数値目標を掲げた「海洋プラスチック憲章」が米国と日本を除くカナダと欧州各国により承認された。日本は、G7だけの取り組みでは不十分だという認識を示し、安倍首相は「先進国だけでなく、途上国を含む世界全体の課題として対処する必要がある」と述べ、大阪G20で日本の統合的な対策を示すことを約束した。
今月11~15日にケニア・ナイロビで開かれた第4回国連環境総会(UNEA4)では、160カ国が参加し2030年までに使い捨てプラスチック製品の大幅削減などを盛り込んだ閣僚宣言が採択された(米国は一部不参加)。日本は「環境と成長の好循環」を実現し、世界のモデルを示すとの方針を表明。ごみの回収・廃棄物管理など、途上国を巻き込んだ取り組みを呼び掛けた。
大阪G20に向け、政府は「プラスチック資源循環戦略」策定を目指す。素案には①ワンウェイ容器の削減②プラスチックの徹底的な回収・再生利用③植物由来の原料で作るバイオプラスチックの実用性向上――などが盛り込まれている。その一部にはレジ袋有料義務化の実施がある。無償配布をやめて「価値づけ」をすることで消費者のライフスタイル変革を促す狙いだ。
さらに、昨年成立した「海岸漂着物処理推進法」改正により、海洋生態系に深刻な悪影響を及ぼすとされるマイクロプラスチックの流出経路などを調査しながら陸域でのごみ回収率向上、ポイ捨て・不法投棄の撲滅に向け取り組んでいく。
ただ、パリ協定離脱など環境問題に対して消極的な米国をどう引き入れるのか。環境規制は経済活動を抑制するという認識が強い米国を、日本が大阪G20で目指す「地球規模の取り組み」へ組み込むことができるのかも課題となっている。






