地位協定資格者の活用を
エルドリッヂ研究所代表・政治学博士 ロバート・D・エルドリッヂ
人手不足解消の一助に
日米の友好関係発展にも寄与
人口減少に直面する日本で、ここ数年、特にここ数カ月の間、特定技能などを持つ外国人労働者の受け入れに関する「外国人人材拡大」の必要性が議論されている。
人手不足は長い間、問題となっている。実際、15の仕事に対して、働き手は10人しかいない。地域や分野によってはもっと悪い。東京五輪が近づき、年間訪日外国人数は2011年の600万人から3100万人に達し、数十年後には6000万人になると予測されており、状況は悪くなるばかりだ。
日本に在留、文化に適応
興味深いことに、ほとんど見過ごされがちだが可能性のある労働力が、SOFA(日米地位協定)資格者と呼ばれる、日本に派遣されている米軍人の軍属(その配偶者と子供たち)だ。特別な許可があれば、軍人自身もパートタイムで働くことができる。国内には、子供を含め10万人を超えるSOFA資格者がいる。
彼らは1~2年、場合によっては6、9、12年間滞在する。長期滞在者は「入植者(homesteaders)」と半分冗談で軍の中で言われている。特にこうした長期滞在者は、国際感覚を身に付けた安定した専門職労働者として貢献できる。
日本は外国人労働者を必要としている。より望ましいのは既に日本に在留し、日本文化に適応している外国人を使うことだ。来日が2度目、3度目という軍人も多い。
特に、外国人観光者が増えている沖縄ではホテル、レストラン、ショップなどサービス業がブームになっているが、人手不足問題は深刻だ。こうした企業は従業員が必要で、比較的長い間日本に滞在する人が好ましい。しかし、このほど通過した法案は、外国人労働者の受け入れ人数や規模などの詳細について報告されていたため、採用が進まないのが現実だ。
いずれにせよ、海外から呼び寄せる外国人労働者では間に合わないだろう。だからこそ、日本政府は、日本で暮らす米軍のSOFA資格者に目を向けるべきだ。
基地の外で働くことを魅力的にするには、税制の特別措置が必要で、ほかの永住者または日本人と同様に扱う必要がある。具体的には所得税を20%ではなく10%とすべきだ。実質的に軍人・軍属らは日本で暮らしており、所得税法でいう「非居住者」とみなされるべきではない。
もちろん、基地外で働く理由は給与だけではない。日本人との友好関係を構築し、両国間の関係発展に寄与することができる。日本語を学び、日本の文化や習慣などに通じることができる。彼らが経験し人脈を築くことで、後に日本に永住することもあり得る。これが、日本と両国関係に貢献し、退役後の新しい仕事に道を切り開く。若い世代にとっては、将来生かすことができる職業経験となるであろう。
筆者は以前、在日米軍司令部に問い合わせて返事はなかったものの、軍側の懸念の一つは、運用上の安全保障、すなわち、軍事作戦、能力、リソース、隊員の移動などについての情報の漏洩(ろうえい)だと推測できる。これは現在も過去も未来も、任務中か社交の場なのか、状況にかかわらず常に問題になる。基地外で働く人は、仕事の申し込みをするにあたり、こうした安全措置に関する訓練を義務化することもできる。
先に言及したように、沖縄の人手不足が深刻だ。日本各地もそうだ。幸い、米軍施設は人手不足に直面している地域にある。関東では横須賀、横田、座間など、山口は岩国、九州は佐世保、東北は三沢に米軍施設がある。
所得税法の特別措置を
日本政府は米国当局と協議し、上記の関係者を対象に、労働力不足と新法のギャップを埋めるために所得税法の特別措置を講じるよう考慮してほしい。
該当グループのための所得税法の改正は、現行の税率よりもより多くの税収をもたらすことになる。基地の外で一切働かない人が就労し、こっそり違法に働く人は合法的に仕事がしやすくする。
上記の提案を導入すれば、企業、日本の経済、米軍の関係者など皆にとってウィンウィンの関係が実現できる。