老後に対応する社会システム
「2周目の人生」を豊かに
健康・資産・貢献の寿命延ばせ
人生100年時代を迎えた日本で誰もが老後をより豊かに生き生きと過ごすためには、既存の経済・社会システムを抜本的に変革していく必要がある。
健康寿命、資産寿命、貢献寿命という三つの切り口から、ネガティブに語られがちだった老後をポジティブに捉え直し、可能性を探ることが大事である。以前は自分の老後に不安を感じていたが、年齢を重ねることは多くの変化を経験して、人生への知見やポジティブな発見を得ることなのである。
最近では仕事を通じてだけでなく、いろいろな人がさまざまな形で社会との接点や人とのつながりを持てる機会が増えている。今後、寿命が延びれば延びるほどチャンスが増える社会になる。
国内外を問わず「超高齢社会は、経済の活力が失われ社会保障費が増大する暗い社会」と考える人が多い。
近い将来、世界の半分以上の国々が超高齢社会に突入するといわれるが、いたずらに不安がるのではなく視点を変えて問題を捉えることが大切である。生物学的な人の寿命は120年といわれている。「還暦」とは暦が1周したという意味。暦が2周する120年を「大還暦」という。昔に比べ高齢者は元気になっており、2周目の人生を生きることができるようになった。高齢者は「弱い者、支えられるべき者」ではなく、子育てが終わり「自分と社会のためだけに全てのエネルギーを使える人」である。
日本がこれから取り組むべきテーマは、高齢者が与えられた人生をいかに楽しく健康に生きることができる社会をつくるかである。
現行の社会保障制度は、1970~80年代、高齢者が少なく、労働人口に最も恵まれた時期につくられた。人口構造が変わっているのに、昔の制度を無理に維持しようとすることが問題の根源と言えよう。時代の変化に合わせた新たな経済社会の仕組みをつくる必要がある。特に高齢化の進展と同時に、疾患の性質が変わっていることに目を向けるべきである。疾患の原因が体の外からくる感染症型から、自分自身の生活に原因がある生活習慣病・老化型へと変化している。生活習慣病や老化の予防や進行管理には患者本人の関与が不可欠である。
これまで医療も介護も「誰かに何かをしてもらう」ことが基本だったが、今後は自分が「どう生きたいか」を基本とすべきである。病気になって動けなくなってから支える公的サービスだけでなく、病気を予防し活動をサポートする民間保険やサービスも活用しながら、2周目の人生における新たな「幸せの形」をつくることが大切である。
日本では長寿・高齢化について意識と現実に大きなギャップがある。平均寿命を実際よりも短く予想している人が多いほか、老後の平均年数を実際よりも少なく考えていた。これによって豊かな老後を送るために必要な貯蓄額を見誤るおそれもある。老後にマイナスイメージを持つ方が多いのは、このあたりにも理由があるかもしれない。
「老後を変える」というテーマの下、保険会社もお客様の老後を明るく豊かなものにするための取り組みに力を注いでいる。
老後のイメージを変えるためには「産官学民」の対話と強いパートナーシップが必要であるとの認識から、今年6月、「老後を変えるサミット」が開催され、各界から専門家を招いて超高齢社会の実態を探ったところ、そこでは「人生100年時代にはロールモデルを一人ひとりが描くことが必要」「豊かな老後には健康寿命、資産寿命、貢献寿命の三つが不可欠」「産官学民の継続的な対話と強い連携が必要」という結論に至った。
今年、全国20~70代の1万4100人対象の大調査を実施した結果を見ると、老後は全ての年代にとっての関心事であり、各年代の8割以上が不安に感じていた。都道府県別に見ると、老後に不安を感じない割合が高い都道府県の上位は宮崎県、千葉県。宮崎県は「今が幸せ」と回答した60代以上が全国最多の92%。千葉県は「これからの人生は明るい」と回答した60代以上が全国最多の85%だった。また、老後に不安がない人は本音で話せる友人がいる割合が高く、あらゆる面で老後を楽しむ傾向にあった。
老後の不安の要因は、お金、健康、認知症の順だった。これらの不安を解消するには、健康寿命、資産寿命に加えて、人や社会とのつながりを持ち続け、いつまでも貢献の意識を感じられる貢献寿命を考えることが大事である。そして、この三つの寿命を延ばす現実的な認識の向上と具体的な計画、行動が重要になる。
老後を変えるためには、社会インフラ、生活者、企業の連携なども求められる。社会インフラに合わせた教育・雇用や、医療・介護の仕組みを変えなければならない。生活者は、人生100年時代を前提としたロールモデルを描き、自分で人生のかじ取りをすることが必要である。
(あきやま・しょうはち)











