感染症予防への「免疫力」効果

メンタルヘルスカウンセラー 根本 和雄

自然治癒力高める生活術
腸内環境整え、体温め、快眠を

メンタルヘルス・カウンセラー-根本和雄氏

メンタルヘルス・カウンセラー-根本和雄氏

 新型コロナウイルスの世界的な感染の状況は極めて深刻である。しかも、この感染症に対する世界保健機関(WHO)の果たす役割は極めて重要である。人類の健康を守ることを基本的理念として1948年に設立されたWHOは、いま改めて、その役割が問われているのではないかと思う。

 感染症予防への医療的方策については、医療の専門分野に委ねるとし、ここでは日常生活における各自の生活様式について、いかに免疫力(抵抗力)を高めて感染症を予防するか、その生活術の一端を述べたいと思う。

自然の摂理に則し生活

 初めに、努めて「自然の摂理に則した生活」を実践するよう心掛けること。全ての生命は常に崩壊へと進み、それがエントロピーであり、それを修復し、再生へと向かうのがシントロピーである。それを可能にしているのが自然の摂理である。

 例えば「草木わずかに零落すれば、便(すなわ)ち萌頴(ほうえい)を根底に露(あら)わす」(『菜根譚』後集112)。即ち“草木が枯れ落ちると、根元にはもう芽生えが始まっている”の如(ごと)くに、自然の摂理に則した生活が、修復力即ち回復力、つまり「自然治癒力」を育むことになる。加えて、このシントロピー(蘇生)に向かわせる力は「精神力」と、ポジティブな生活スタイルが、より自然治癒力を高めることも明らかになっている(新谷弘実・北里大学客員教授)。

 また、グリアー(イギリスの心理療法家)は、ポジティブな精神状態を保ち物事に前向きに対処することで、免疫力を向上させることができるという。このことを『こころと免疫をめぐる新しい医学』(86年)の著者・スティーヴン・ロク助教授(ハーバード大学医学校精神科)はこう述べている。

 “健康を保つには、何よりも内外の調和に配慮し、自然界の法則にそって生活することが大切である。こころのなかで起こることは、すべて体の現象に影響を与える”と(上野圭一訳・同書12ページ)。従って、心と体の双方から「心身一如」の立場で、自然治癒力(回復力)を高めることが重要である。

 次に「免疫力食事法」の重要性について述べたいと思う。この「免疫力食事法」とは、食べ物と免疫細胞との相互作用を調節して、体の抵抗力(免疫力)を高める食事法である。

 免疫力は、腸内環境の質に大きく左右されている。なぜならば免疫細胞の約7~8割が腸内に存在し、腸内環境がよければ、免疫力が高まることが明らかになっている(腸内には約100兆個もの細菌が棲(す)んでいるという)。従って、腸内環境をよく整えるためには、腸を温めて、発酵食品(納豆・ヨーグルト・ぬか漬けなど)を程よく食べること、しかも偏らないでバランス良く、丁寧に咀嚼(そしゃく)することも免疫力を高めることになるという(白澤卓二・日本抗加齢学会理事の所見)。

 第三に「体を温める生活習慣」である。免疫力の働きには、白血球の働きが極めて重要である。体が冷えると、この白血球の働きが低下し自然と健康を損ねることになる。古くより「頭寒足熱」というように、足を温めることは、全身の血流効果を高めることになる。体温が1度上がると、免疫力は5~6倍になるという。また、加えて、体を温める「陽性食品」例えば根菜類(牛蒡(ごぼう)・人参(にんじん)・生姜(しょうが)など)を食べるのも効果的である。

 第四に「睡眠健康法」である。「時間医学」の知見によれば、質の良い7~8時間の睡眠は免疫効果を高めることが明らかになっている。加えて、重要なことは「夜の12時前の1時間の睡眠は、それを過ぎた後の2時間以上の睡眠に相当する」という(アメリカの解剖学者・ドワイト医師の研究による)。つまり、睡眠には、その時間帯が重要で、しかも熟眠・安眠・快眠を心掛けることが大事ではなかろうか。

ストレスを上手に解消

 第五に「ストレスを上手に解消する」ことである。ストレスを解消することで心の安定が保たれ自然に免疫力を高めることになる。

 これらは「感染症」予防への免疫力を高めて自然治癒力を生かす生活様式(ライフスタイル)についての所見の一端である。

 今後、いかに「感染症を予防するか」は、私たちに課せられた最大の課題であり、そのためにも、各自の感染症予防対策が急務である。

 終わりに改めて、次の言葉を噛(か)み締めたいと思う。

 “自然治癒力を崇(あが)めよ”(ヒポクラテス)

(ねもと・かずお)