防災・減災考える国際会議を
エルドリッヂ研究所代表・政治学博士 ロバート・D・エルドリッヂ
若者集め毎年日本で開催
インド太平洋からの参加期待
今は地震が頻発する「地震の季節」にあると言えよう。
過去、日本で発生した最悪の自然災害は9月から3月にかけて起きている。関東大震災が発生したのは1923年9月、昭和南海地震は46年12月、阪神淡路大震災は95年1月、東日本大震災は2011年3月だ。
その期間を3カ月延ばすとすれば、1948年6月の福井地震、64年6月の新潟地震、そして2016年4月に起きた九州北部地震がある。いずれの災害も、米軍が救援活動を行った。
地震が発生しやすい季節だとすれば、筆者も経験した阪神淡路大震災から25年の節目を機に、あなたや家族に降りかかるかもしれない震災の影響を事前に軽減するための物理的かつ経済的に必要な措置や対策を講じるべきだ。そうすることで、被災者となることを免れるだけでなく、友人や隣人、他人を助けるという優位な立場に立つことができる。
政府が全面的に支援を
読者の皆さん、そして、特に日本政府、民間セクターの支援者、学術界、財団、非政府団体(NGO)および非営利団体(NPO)関係者に考えてほしいことは、インド太平洋地域から日本に多くの若者を集めた上で、災害軽減、対策、即応に関する会議を毎年開催し、政府が全面的に支援することだ。
毎年行われる会議は、民間セクターと外務省、国際協力機構(JICA)などその他政府機関が共催で主導できるだろう。おそらく、駐日米国大使館の「TOMODACHIイニシアチブ」が関与できるはずだ。
理想的な参加者は、国際的な意識が高く、自国だけでなく世界中の問題解決に関心があるインド太平洋地域の高校生と大学生が想定される。世界の若者は現代社会で大活躍しており、世界を動かしている。今後ともその傾向が続くと思うし、筆者を含む中年以上の世代はそれを応援すべきだ。
読者もご存知のように、インド太平洋地域は、地震、津波、噴火、台風、サイクロン、豪雨などの自然災害が起きる確率が地球上最も高い。また、現在も続いているオーストラリアの森林火災もある。それだけでなく、貧困や腐敗、悪いインフラ、全体的に貧弱な統治は、小さな自然災害を甚大な「人災」に変えてしまう危険もある。
100人規模の5日間の会議を開催するとして、5分の1から3分の1は日本人が参加すべきだ。
会議の一部または全ては毎年、日本国内の違う大学を会場にして行えば、先進国として自然災害で得た教訓を、開発途上国を含めた他国に共有することができる。国内のどの地域でも何らかの自然災害を経験しており、地方ならではの視座や現地視察を会議のプログラムに組み込むことができよう。
地方を旅行することで、参加者は東京以外、日本の別の側面を知ることができるし、将来的に仕事や研究のために日本に来たいという思いを抱いてくれるかもしれない。
毎年会議を行うことを通じて、国際友好関係の構築、次世代のコラボレーション、災害分野での未来の専門家の育成、若者にクリティカル・シンキングを身に着けさせる、考えるだけでなく行動するためのツールやネットワークを若者に提供する―など、多くの目的が達成できる。
来年3月の開催が最適
来年3月には東日本大震災から10周年の節目を迎える。震災当時、米国が即座に対応したが、筆者は仙台に派遣された在日米軍の政治顧問として関与する機会に恵まれた。来年3月は会議を開催するには最適な時期だろう。仙台など東北地方での開催が望ましい。開催が間に合わないのであれば、会議の開催を宣言するだけでもよい。
中国をはじめ、各国政府がこれまで水際阻止に失敗してきたコロナウイルス感染症の拡大は、協力の重要性を改めて認識させられたのではなかろうか。人間の判断や行動(あるいは行動しないこと)によって、問題が大きくなるのが「人災」というのだが、まさに今回の感染病はそれに当てはまる。
ユース(若者)による国際会議は、感染病をはじめ、問題や災害が「人災」にならないようにといった課題も議論できる場になると思われる。