これは教育の戦いだ 子ども兵士、子ども人間爆弾NO
イラクとシリアで支配を広げる過激派組織「イスラム国」への懸念は、強まる一方だ。その大きな懸念の一つが、子どもの兵士、テロ戦士の使用である。国連人権高等弁務官は9月、子どもを彼らから護(まも)れと訴えた。
実際、先ごろイラク北部のモスル市を奪取した同組織は、6~10歳の孤児100人以上を集め、洗脳と軍事訓練をしているという。人権団体によれば、シリアで相当数の子ども兵士が死んでいる。
世界の子ども兵士(17歳以下)の推計は、2001年の30万人から、07年に25万人に減った。だが、再び増えつつある気配だ。
国連の「子どもと武力紛争」年次報告に、「恥のリスト」がついている。子どもを武力紛争に投入、または子どもに残酷行為をしている軍や武装勢力の名簿だ。07年に記載された組織は44。それが12年52、13年55、14年は59と増えた。
子ども兵士は使い捨てされる。シリア内戦では政府軍側も、8~13歳の子どもを拉致し、軍用車の窓側に並べ、大人の兵士を護る「人間の盾」にしていると非難された。
私は、1980年代のイラン・イラク戦争で、イラク側から最前線を取材した。
イラク軍将校が「イランは子ども兵士に、国境の地雷原を一列横隊で突進させてくる。地雷が爆発し、子どもの多くが死傷した後の安全地帯を、大人の部隊がやってくる」と嘆いた。ひどい話だが、その後、この地雷除去戦術は他の紛争にも引き継がれた。
さらに冷酷な扱いが、子ども自爆テロだろう。近年、アフガニスタン、パキスタンの過激派「タリバン」により、年間20件以上も行われてきたが、今「イスラム国」、アフリカのナイジェリアの集団「ボコハラム」(「西洋の教育は罪悪」の意)などに拡大している。
「イスラム国」が8月、シリア北東部の政府軍最後の空軍基地を攻略した際も、14歳の少年を含む人間爆弾が使われた。
今年初めて「恥のリスト」入りした「ボコハラム」も、イスラム教国樹立を唱え、国の北部で住民を虐殺、女性や子どもを大量に拉致している。女性や子どもは爆破目標に近づきやすいから、自爆テロ要員にされる。
7月末には、北部の中心都市カノで、4日間に4件の連続自爆テロ。実行犯は皆10代の少女だった。別に10歳の女児も未遂で逮捕された。
アフガニスタンでは1月、10歳の少女が、爆破目標の警察署の手前の川を渡る際、水が冷たくて大声で泣き出し、未遂でつかまった。そんな子まで使う。
「5歳の幼児も自爆用に集めているぞ」と誇る「タリバン」司令官もいた。幼児は、本人は知らずに遠隔操作で爆破される自爆人形ともなる。
自爆テロ用に訓練した子どもを別グループに、7000㌦以上で売る売買が行われている、とも報じられた。テロは卑劣、子どもを使う自爆テロは卑劣中の卑劣、自爆人形テロなど卑劣中の卑劣中の卑劣と言えよう。
それは空爆で防げない。産油大国ナイジェリアも北部は貧しく、物乞いの子があふれ、過激派の草刈り場だ。「タリバン」は、貧しい子を無料の神学校に集め、洗脳する。
教育の戦いである。「次の世代にペンが与えられなければ、テロリストによって武器が与えられる」。女子教育の重要性を叫んで「タリバン」に襲われたパキスタンの少女、マララの言葉だ。公費と援助と熱意を最大限投入し、子どもを普通の学校に取り戻し、アラーの神は選んでなどいないと、しっかり教えよう。
(元嘉悦大学教授)







