令和の御代も国民と共に


世界日報社社長 黒木正博

 新天皇陛下が即位され、新時代となる令和の幕が開けました。天皇陛下は初代神武天皇以来、第126代となられ、令和の時代における「国民統合の象徴」としてのお務めを始められます。新天皇皇后両陛下に心からのお祝いを申し上げます。また、前日の4月30日をもって退位された上皇上皇后両陛下に改めて感謝を捧(ささ)げるとともに、皇室のさらなる弥栄(いやさか)をお祈りいたします。
国家国民の安寧を祈られ

 令和の新時代に入り、今後の皇室のあり方に関心がさらに深まると思われるが、天皇陛下は皇太子当時の今年2月、即位を控えられての記者会見で「皇室の在り方に関しては、国民と心を共にし、苦楽を共にする皇室、ということが基本であり、これは時代を超えて受け継がれてきているものだと思います」と強調されている。

 このお言葉にもあるように、時代が変わろうとも天皇陛下をはじめ皇室の国民との関係は変わらない。退位された上皇陛下は、平成時代に東日本大震災など多くの自然災害に見舞われた地域を慰労され、また戦後50年の節目には長崎、広島、沖縄、同60年には米・サイパン島、同70年にはパラオのペリリュー島を訪問され、慰霊の旅を続けられた。被災地や激戦地では被災者らに膝をついて寄り添われたお姿は「平成流」と国民の共感を呼んだ。

 昭和天皇も、終戦直後の荒廃した全土を御巡幸され、国民を慰労し復興の大きな原動力となった。終戦直後のマッカーサー連合国軍最高司令官との会見では、戦争の全責任を負うとして自らの処遇、進退について「連合国の裁定に、私自身を委ねるためにここに来ました」と語られ、司令官をして「大きな感動が私を揺さぶった」(マッカーサー回顧録)と言わしめた。

 また、古く日本書紀には16代仁徳天皇の時代、天皇が民のかまどから煙が立ち上らないのは貧しくて炊くものがないのではないかと案じられ、数年にわたり税を免ぜられたとのエピソードもある。

 時代背景が異なり天皇陛下の個性も違うのは当然だが、そのスタイルは違っても、国民に寄り添い、国民と苦楽を共にしてきた歴代天皇はじめ皇室の伝統は変わらない。

 30日の天皇陛下(当時)の退位礼正殿の儀で、安倍晋三首相は国民代表の辞として「私たちは、これまでの天皇陛下の歩みを胸に刻みながら、平和で、希望に満ちあふれ、誇りある日本の輝かしい未来を創り上げていくため、さらに最善の努力を尽くしてまいります」と述べたが、時の最高権力者である総理大臣がこのように身を低くして「伝統と権威ある存在」に誓うこと自体が、国家国民に対する謙虚な姿勢の根拠となり得るのではないか。これは行政システムによる権力チェックとは別次元の日本独特のものといえる。

 国際社会の期待とともに

 こうした長き伝統の上に築かれた令和の新時代には、日本が国際社会からのさらなる役割を期待されよう。新天皇皇后両陛下の「国民と苦楽を共にする」新たなご出発を祝したい。