天皇陛下御退位 両陛下の祈りに守られた30年


 天皇陛下がきょう退位され、平成の時代は30年3カ月余りで幕を閉じる。皇太子殿下が明日5月1日午前0時をもって新天皇に即位され、新元号、令和の時代が始まる。御退位後に上皇、上皇后となられる両陛下には、何より30年間、本当にお疲れさまでしたと感謝の言葉をお捧(ささ)げしたい。

 国民との絆が一層深まる

 陛下が即位されたのは、世界的に見ると、ちょうど東西冷戦が終結した時期に当たった。新しい国際秩序が生まれ、安定した世界が出現するかと思われたが、実際は民族・宗教の対立が激化し、テロや内戦が頻発する混沌(こんとん)とした様相を呈してきた。

 日本国内では平成2年にバブル経済が崩壊し、その後の混乱と不況の時代、「失われた20年」へと続く。経済だけでなく政治でも、不安定な時代が続いた。平成5年には細川連立政権誕生で自民党が政権から転落して55年体制が崩壊。その後、何人もの首相が1年ほどで辞任する短命政権が続いた。

 社会的事件としては、平成7年にオウム真理教による地下鉄サリン事件が起き、国民を大きな衝撃と不安に陥れた。

 人々の心にさまざまな形で不安の影が差す時代にあって、われわれ日本人が心の支えとしたのが天皇陛下と皇室の存在であった。何よりそれを強く感じたのは、平成23年に起きた東日本大震災である。

 この未曽有の自然災害に、実際に被災した人たちはもちろん、多くの国民が打ちのめされ、不安に陥れられた。この時陛下は、昭和天皇が大戦を終結させるために、自らマイクの前に立たれた終戦の玉音放送以来の異例のビデオメッセージで国民を慰め激励された。

 陛下のお言葉はわれわれの心の底深くに響いた。当時の首相や他のいかなる指導者が語る言葉とも全く質の異なるものであることを実感した。陛下の御仁徳と、天皇と国民との間に結ばれてきた長い歴史的な絆がそうさせたのである。

 陛下の沖縄や海外のサイパン島ほか戦跡地への慰霊の旅も、忘れ難い。沖縄御訪問を果たせなかったことが昭和天皇の大きなお心残りだった。戦跡地への御訪問は、昭和天皇の御遺志を継がれるものであるとともに、平和を守る陛下の御決意を示すものであった。

 平成は平和が保たれたが、一方で自然災害の多い時代だった。天皇、皇后両陛下はそのたびに被災地を訪問され、人々を励ましてくださった。その結果、両陛下と国民との間の絆は一層深まったのである。象徴としてのお務めを真摯(しんし)に追求された陛下の御努力の結実とも言える。

 平成の初めにおいては不安と自信喪失にさいなまれた日本国民も自信を取り戻し、国内外のさまざまな課題と立ち向かう勇気を回復した。日本人が優しさと誇りを持った国民として新しい令和の時代に臨むことができるのは、両陛下の祈りがあったからだと実感する。

 御休息とお見守りを

 両陛下には、まずはゆっくりとお休みいただき、そしてこれからも新しく位に就かれた天皇陛下や皇族方、そして国民を見守っていただきたい。