中国海警法成立、尖閣周辺の挑発激化に警戒を
中国海警局の武器使用を含む任務と権限を定めた「海警法」が成立した。
海警局の船舶は沖縄県・尖閣諸島周辺で日本領海への侵犯を繰り返し、日本漁船を追尾するなどの事案も生じている。法整備による挑発激化に警戒を強める必要がある。
主権侵害に武器使用
海警法は2月1日に施行される。昨年11月に公開された法律の草案は、中国の主権や管轄権を侵害する外国の組織、個人に対して、海警局が「武器の使用を含むあらゆる必要な措置」を取り、危険を排除する権利があると明記。中国の法に違反した外国の軍艦や公船に関しても、退去を命令したり強制的な措置を取ったりすることができると規定している。
中国海警船が昨年、尖閣周辺の接続水域に侵入した日数は333日に上り、領海侵入も24回に達した。海警法が施行されれば、挑発行為がさらにエスカレートする恐れがある。
海警法をめぐって、中国外務省の華春瑩報道局長は「釣魚島(尖閣の中国名)は中国の固有の領土であり、中国は領土主権と海洋権益を守る」と述べた。「嘘(うそ)も100回言えば真実となる」――ナチス・ドイツのゲッベルス宣伝相の言葉だとされている。中国共産党政権も、こうした情報戦略を踏襲しているようだ。
しかし、尖閣は中国領土ではなく、日本固有の領土である。日本政府が1895年1月に尖閣を日本領土として編入した際、当時の清政府は異議を唱えなかった。中国が領有権を主張するようになったのは、尖閣周辺に石油が埋蔵されている可能性が指摘された後の1970年代からだ。中国が尖閣周辺の領海に侵入し、身勝手に振る舞うことは断じて容認できない。
海警局は2018年に国内の治安維持を担う人民武装警察部隊(武警)に編入され、軍の最高指導機関である中央軍事委員会の指揮系統に入るなど軍との一体化が進んでいる。昨年の米国防総省報告書によると、海警局の排水量1000㌧以上の船舶は10年以降、約60隻から130隻以上に急増した。
1万㌧級の大型船舶など新造艦の多くはヘリコプターの発着が可能で、30~76㍉の機関砲など武器も搭載し、事実上の「第2海軍」となっている。この報告書は「世界で圧倒的に最大の沿岸警備部隊」になっていると分析した。
日本が尖閣を守るには、海上保安庁の大型巡視船を増やすなどの警備体制強化や、海保と海上自衛隊の連携強化などが必要だ。軍事攻撃に至らない侵害行為で尖閣奪取を狙う中国の「グレーゾーン」戦略に対応するための法整備も求められよう。
実効支配強化を急げ
もう一つ重要なのは、実効支配の強化である。公務員の常駐や、灯台、気象観測所の設置などを急ぐべきだ。
米国との連携強化も欠かせない。尖閣周辺での自衛隊と米軍による共同訓練の実施を定例化する必要もある。菅義偉首相はバイデン新政権との信頼関係構築を進め、中国の脅威への積極的な対処を促し続けなければならない。