ジェノサイド認定 中国への国際的圧力強めよ


 米国のトランプ前政権のポンペオ前国務長官は政権最終日、中国政府によるウイグル族ら少数民族への迫害について「ジェノサイド(民族大量虐殺)」および「人道に対する罪」であると認定した。バイデン新大統領が国務長官に指名したブリンケン氏も、ジェノサイド認定に同意した。国際社会は中国への圧力を強めていくべきである。

少数民族への迫害を非難

 ポンペオ氏は声明で、中国当局はウイグル族の100万人以上の民間人を投獄し、女性に対する強制的な不妊手術、強制労働や拷問、宗教の自由に対する厳しい制限を行っていると指摘して「中国一党独裁政権による体系的なウイグル族破壊の試みを、われわれは目撃している」と強調。「少数民族、宗教を強制的に同化し、最終的には消滅させようとしている」と厳しく非難した。

 米国やオーストラリアなどの研究機関の発表によると、中国当局は、ウイグルに組織的、体系的に実施してきた同化政策を、チベット族など他の少数民族に対しても進めている。

 昨年9月には、内モンゴル自治区の学校で、中国語の教育を強制し、モンゴル語の弾圧に着手した。民族的アイデンティティーの最後の拠り所である言語の抹殺は、文化的ジェノサイドと非難されている。

 中国の同化政策の目的は、ポンペオ氏も指摘するように、最終的に少数民族を消滅させることにある。「中華民族」という歴史的にも民族学的にも存在しない民族を掲げるのは、少数民族の消滅を公言することに他ならない。

 第2次大戦後も民族紛争の激化で、ルワンダやボスニア内戦などでジェノサイドが起きた。しかし、中国が現在行っているジェノサイドは、ナチス・ドイツによるユダヤ人大量虐殺(ホロコースト)以来の大規模で計画的なものである。

 ナチスによるホロコーストが起きたのは約80年前の大戦中であったが、中国では平時において、より計画的、巧妙にナチス同様の残虐非道なことが行われているのである。中国から経済支援などを受けた途上国は口をつぐんでいるが、国際社会はこの問題に向き合い、非難の声を強く上げなければならない。

 ポンペオ氏の声明には、バイデン新政権に中国への厳しい対応を促す狙いがあったとみられる。新政権も、中国のジェノサイド、人権弾圧を容認しない姿勢を示していることは明るい材料だ。

 中国政府に対し、日本政府はもっと厳しいメッセージを送るべきである。日本は自由主義国家との連帯を強調する時に「民主主義、人権、法の支配など共通の価値」を強調する。人類史上稀(まれ)にみる悪辣(あくれつ)な反人道的政策が遂行されていることに対して、中国の反発を恐れ沈黙することは許されない。

少数民族への支援拡大を

 中国は2国間で問題が起きると相手国の国民を逮捕して人質に取ったりすることも平然と行う。しかし、そういう行為に屈するべきではない。中国への圧力を強め、迫害の中にあるウイグル族など少数民族への支援を拡大していくべきだ。