香港民主派実刑、自由と民主否定する不当判決


 香港の裁判所が、昨年6月の違法集会を扇動した罪などに問われた民主活動家の黄之鋒氏に禁錮13月半、周庭氏に同10月、林朗彦氏に同7月の実刑判決を言い渡した。

 「逃亡犯条例」改正に反対

 3人は昨年6月、中国本土への容疑者引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改正案に反対し、警察本部を包囲する抗議集会を扇動したなどとされる。報道によると、裁判官は「抑止のための刑罰を科す必要があり、即時収監以外の選択肢はない」と厳しく糾弾した。

 こうした不当判決は決して容認できない。そもそもこの改正案は、成立すれば中国政府が民主活動家ら政府に不都合な人物の引き渡しを求める恐れがあるとして、香港民主派や国際社会から強い批判を浴びていた。

 香港の高度な自治を保障する「一国二制度」を骨抜きにしかねない改正案に3人が反対したのは当然のことで、民主主義国家であれば平和的な抗議集会が取り締まりを受けることはないはずである。判決は香港の自由と民主主義を否定するものに他ならない。

 判決の背景には、国家安全維持法(国安法)が施行されるなど中国が香港への抑圧を強化していることがある。周氏は今年8月に国安法違反容疑でも逮捕されている。

 香港では11月、中国の全国人民代表大会(全人代)常務委員会が香港立法会(議会)の議員資格として中国や香港への「忠誠」を求める決定を下したことで、民主派4議員の資格が失効した。4人以外の民主派15議員も抗議のために一斉辞職したことで、立法会は親中派が大多数を占め、中国が牛耳る状況になったと言っていい。

 中国は香港の司法も統制下に置こうとしている。香港の林鄭月娥行政長官は11月、裁判官が就任時に香港政府に「忠誠」を宣誓することや、宣誓に違反した場合の手続きを定めた条例改正を行うと述べた。政府の意向に沿った判決を出さない場合、宣誓違反と見なされて解雇される恐れがある。こうした弾圧が現実のものとなれば、一国二制度は名ばかりのものとなろう。

 今回の判決を受け、加藤勝信官房長官は「香港が享受してきた言論の自由や結社・集会の自由にもたらす影響に重大な懸念を持っている」と表明した。日米両国や、香港の旧宗主国である英国などの民主主義国家は、対中包囲網を構築して圧力を強める必要がある。

 菅義偉首相が中国に強い抗議の意を示す上でなすべきは、延期されている習近平国家主席の国賓来日中止を表明することである。香港での民主派弾圧のほか、沖縄県・尖閣諸島沖で中国海警船が活動を活発化させていることで、自民党保守派らは国賓来日に強硬に反対している。首相は曖昧にせず、正式に中止を決定しなければならない。

 中国の膨張主義に対抗を

 香港の統制強化を進める中国が、台湾に対しても統一に向けた圧力を強めていくとの見方も出ている。台湾が中国の手に落ちれば、日本にとっても重大な脅威となる。日本は米国などと連携し、中国の膨張主義に対抗すべきだ。