香港議員排除 習氏の国賓来日を中止せよ


 香港立法会(議会)の民主派4議員の資格が剥奪された。中国による香港への主権行使を認めない場合、立法会議員の資格を失うという中国全国人民代表大会(全人代)常務委員会の決定によるものだ。

 香港国家安全維持法(国安法)に続き、香港の高度な自治を認めた「一国二制度」を骨抜きにする決定だ。こうした暴挙は断じて容認できない。

 一国二制度を完全放棄

 決定によると、中国からの香港独立を支持したり、外国勢力の干渉を招いたりした場合、また国家の安全に危害を加えた場合は、香港基本法(憲法に相当)に忠実でないと判断され、議員資格を失う。

 民主派議員による議場での抗議や異議表明なども新規制に違反すると見なされかねず、これでは香港の民主主義の完全否定に他ならない。

 そもそも基本法では、議員資格停止の条件として出席議員の3分の2以上の譴責などを求めている。選挙で選ばれた議員の身分保障のためだが、今回の決定はこうした規定を無視するものだ。基本法を軽んじているのは中国の方である。

 中国の習近平政権が米大統領選の時期に合わせ、民主派に対する締め付けを強めたとみていい。民主党の胡志偉主席は「中央政府は一国二制度を完全に放棄した」と糾弾し、民主派議員19人は4人以外の15人も抗議のため一斉に辞職した。

 これによって、定数70の立法会で21人いた民主派は2人に激減した。親中派議員が41人を占める立法会では、反対勢力が失われたことで中国の意向を反映した法整備が進むだろう。中国による一層の統制強化が懸念される。

 今回の決定は選挙への立候補時にも適用される。2021年に延期された立法会選など今後の選挙では、民主派候補の一掃が予想される。民主派が排除されれば、行われるのは翼賛選挙である。

 常務委の決定では、国家への「忠誠」を「立法会議員を含めた公職人員」に要求。香港の林鄭月娥行政長官は「関連法整備を進める」と述べており、裁判官や区議会議員、一般の公務員らに対しても「愛国心」の有無が採用や解雇の基準になる可能性がある。

 こうした規制は、香港の高度な自治を踏みにじるものだ。香港の宗主国だった英国のラーブ外相は「香港の長期的な安定を損なう」と非難した。

 中国が一国二制度による統一を目指す台湾への外交圧力が高まる恐れもある。自由、基本的人権の尊重、法の支配といった普遍的価値を共有する日米両国や英国などの民主主義国家は、共産党一党独裁体制の中国と厳しく対峙(たいじ)する態勢を強化しなければならない。

 抑圧許さぬ姿勢を示せ

 香港への強権統治を進める中国を牽制(けんせい)する上で、まず日本がすべきは習国家主席の国賓来日の中止を決定することだ。

 一国二制度の骨抜きを図る習氏を国賓として招くことなど絶対にできない。菅義偉首相は速やかに中止を表明し、香港への抑圧を決して許さないとの姿勢を示す必要がある。