女川原発同意 再稼働の停滞打破につなげよ
東日本大震災で停止していた東北電力女川原発2号機(宮城県石巻市、女川町)について、同県の村井嘉浩知事が再稼働への同意を表明した。
震災で被災した原発に対する地元同意は初めてだ。原発再稼働が停滞する現状の打破につなげたい。
福島第1と同型では初
女川原発は震災時、原子炉建屋などが海抜14・8㍍にあったため、高さ約13㍍の津波による浸水を免れた。炉心溶融(メルトダウン)が起きた東京電力福島第1原発よりも震源に近かったにもかかわらず、冷温停止に成功して事故を防いだ。
女川原発の位置する三陸海岸は、これまで多くの津波に見舞われてきたことから、建設時に万全の対策を講じたことが奏功したと言えよう。被災者の避難所ともなるなど、安全性の高さを示した。
女川1号機は廃炉が決定。2号機は今年2月、安全審査に合格した。東北電は3号機の再稼働も目指している。女川原発は福島第1原発と同じ沸騰水型軽水炉(BWR)で、BWRの再稼働に対する地元同意も初めてとなる。この意義は大きい。
全国の原発33基のうち福島第1原発事故以後に再稼働したのは9基にすぎない。この9基は全て加圧水型軽水炉(PWR)で西日本にある。
BWRでは、東電柏崎刈羽原発6、7号機(新潟県柏崎市、刈羽村)と日本原子力発電東海第2原発(茨城県東海村)が安全審査に合格しているが、地元の反対や慎重姿勢で再稼働のめどは立っていない。女川2号機への地元同意を、BWRの活用を進めるきっかけとしたい。
安価で安定したエネルギーの供給には、原発を欠かすことができない。政府は原発を「重要なベースロード電源」と位置付けている。
2号機の再稼働は安全対策工事が完了する2022年度以降となる見通しだ。東北電は震災後、施設の耐震補強工事のほか、最大23・1㍍の津波に備えて29㍍の防潮堤の整備を進めている。再稼働は雇用や消費につながるため、地元の期待も高い。着実に準備を進めてほしい。
菅義偉首相は「50年までの温室効果ガス排出実質ゼロ」を掲げている。この目標を達成する上でも、発電時に二酸化炭素(CO2)を排出しない原発の活用が不可欠だ。
政府は風力や太陽光など再生可能エネルギーの普及に向けた規制撤廃などの取り組みを強化する。確かに、地球温暖化を防ぐためには再生エネの活用も重要である。
ただ再生エネは日照時間や風量などで発電量が左右されるため、出力が不安定という構造的な弱点がある。活用を進めるには、技術開発やコストの低減など多くの課題がある。
脱炭素へ新増設も進めよ
菅首相は国会答弁で、脱炭素社会実現に向けて「再生エネのみならず、原子力を含めてあらゆる選択肢を追求する」と述べた。妥当な見解だと言えよう。
エネルギー基本計画では、30年度の電源構成で原子力を20~22%とする目標を掲げている。原発の再稼働だけでなく、新増設も進めるべきだ。