中国5中総会 強権統治と膨張主義に対抗を
中国共産党の第19期中央委員会第5回総会(5中総会)で、次世代指導者の要職への起用は発表されず、22年の党大会後も習近平国家主席(党総書記)の3期目続投が確実視される状況になった。日米をはじめとする国際社会は、習氏独裁で一層強まるであろう強権統治と膨張主義に対抗していく必要がある。
内需拡大に軸足置く
5中総会は2035年までに「1人当たりの国内総生産(GDP)を中等発展国家の水準に引き上げる」方針を決定。「中等発展国家」は先進国に準じる水準を指すとみられ、国営新華社通信が発表したコミュニケには都市と農村の生活水準の格差是正に取り組むと明記された。
新5カ年計画に関しては、新たな発展モデル「双循環」を基調として、持続的な経済成長を図る考えが示された。世界経済の悪化や米中対立の激化を念頭に、内需拡大に軸足を置き、外国資本や技術を取り込んで経済の好循環実現を目指す。
しかし中国はこれまで、先端技術を先進国から詐取して軍事転用を図ってきた。このことは米中対立を引き起こす一因ともなっている。他の先進国も米国に同調して中国通信機器最大手・華為技術(ファーウェイ)の排除に乗り出し、米国は国際的な原材料・部品の供給網(サプライチェーン)から中国を締め出す戦略を主導するなど、対中包囲網が強化されつつある。
5中総会は35年までの目標として「核心的技術の重要な進展を実現する」と表明。習氏が掲げる「自力更生」の精神に基づき、独自の先進的科学技術の獲得を急ぐ方針を鮮明にした。だが、自国だけで最先端の技術は開発できまい。知的財産権の保護や産業補助金の見直しなど構造改革を進め、国際社会と協力しなければ、決して発展できないことを肝に銘じるべきだ。
もっとも、中国に国際協調を期待するのは難しいようだ。香港国家安全維持法(国安法)の制定などで混乱が続く香港について、5中総会は「長期的な繁栄と安定を保つ」と強調した。しかし香港の高度な自治を保障する「一国二制度」を骨抜きにする国安法は、国際社会の強い反発を招いている。チベット、新疆ウイグル、内モンゴルの各自治区をめぐっても、少数民族の文化を否定する強引な同化政策や人権弾圧を糾弾する動きが各国で広がっている。
5中総会は台湾に関して「(中台関係の)平和発展と祖国統一を進める」と訴えた。習氏は統一へ向け、武力行使も排除しない強硬姿勢を示している。台湾に対する圧力強化に警戒する必要がある。
包囲網構築の加速を
かつて2期10年だった中国国家主席の任期は、18年3月の憲法改正で撤廃された。中国共産党は22年の党大会で最高指導者ポスト「党主席」を復活させ、習氏が就任する見通しだ。
5中総会は「国家主権と発展の利益を守る戦略能力の向上」を訴えた。独裁を強化しつつある習氏は、軍拡を進め、沖縄県・尖閣諸島の奪取や南シナ海の軍事拠点化に向けた動きを一層強めよう。日米などの民主主義国家は、対中包囲網の構築を加速すべきだ。