米大統領選 建国の精神に基づく政治を


 4年に1度の米大統領選の投開票が行われた。共和党のトランプ大統領と民主党のバイデン前副大統領が激戦州で競り合っている。

 勝敗を左右するラストベルト(さび付いた工業地帯)3州などで開票作業が遅れているため、雌雄を決するまでに時間を要することになった。

 左傾化するバイデン氏

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、郵便を含めた期日前投票は1億人を突破した。郵便投票急増で投票日以降の票数が増えるほど、勝者確定までの流れに不透明感が漂うことは確かだ。

 米メディアの集計によれば、4日朝(日本時間同日夜)時点で獲得した選挙人は、トランプ氏が23州の213人、バイデン氏が19州と首都ワシントンの227人。当選するためには、全選挙人(538人)の過半数に当たる270人を確保しなければならない。

 トランプ氏は再選に不可欠な大票田の南部フロリダ州を制したほか、4年前の選挙で勝利した激戦州のアイオワなどを手中に収めた。バイデン氏は東部ニューハンプシャー州や中西部ミネソタ州を押さえた。

 大統領選は、新型コロナ対策か経済活動の再開かをめぐる問題が争点となる一方、両候補の政策の立ち位置についてのイデオロギー的論争が際立った。バイデン政権が誕生すれば社会主義的政策で米経済は衰退する。これを許さないというのがトランプ氏の強固な支持層だ。

 バイデン氏と候補者指名を争ったサンダース上院議員は、国民皆保険制度や大学の学費無料化、富裕層への増税、最低賃金の引き上げなどを公約に掲げて予備選に参戦。自らを「民主社会主義者」と形容し、リベラル派勢力や若年層の支持を得た。

 両氏は、バイデン氏が掲げてきた政策を基本にしつつ、サンダース氏の主張を取り込むことで合意している。バイデン氏は党内で勢いがある急進左派に押され、従来よりも政策を左にシフトしつつある。

 混乱を招き、国民を分断するような政策は避けなければならない。神を中心とした建国の精神、そして家族の重視など伝統的価値を尊重することが米国の発展につながるはずだ。

 今回の大統領選は中国問題も大きな争点の一つとなった。トランプ氏は中国による知的財産権侵害を理由に制裁関税措置を発動したほか、ウイグル問題での中国高官に対する制裁や香港への優遇措置の廃止など強硬姿勢を示し、バイデン氏を「中国に甘い」と非難してきた。

 トランプ政権下の4年間で中国に対する米国人の印象は大きく変わった。世論調査機関ピュー・リサーチ・センターによると、中国を好ましく思わない米国人の割合はトランプ政権発足以降で約20ポイント増加。先月公表した調査では米国人の約73%が中国を否定的に見ている。

 中国共産党政権に対抗を

 対中批判は共和・民主両党ともほぼ一致している。トランプ氏とバイデン氏のいずれが勝利したとしても、自由、基本的人権の尊重、法の支配などの普遍的価値を高く掲げ、中国共産党政権に対抗すべきだ。