沖縄県浦添市、深夜の子連れ飲食に制限を検討

「キッズファーストで」と松本哲治市長、条例案を模索

 沖縄県浦添市は、深夜の子連れ飲食を制限する条例を検討している。松本哲治市長は、子供たちをどのように守り、健全育成していくか、世論喚起を図る狙いがあり、おおむね市民の支持を得ている。(沖縄支局・豊田 剛)

子供たちの健全育成で世論喚起狙う、市民おおむね支持

 「居酒屋に子供たちを連れていかない運動を励行しよう」

沖縄県浦添市、深夜の子連れ飲食に制限を検討

青少年健全育成大会で居酒屋問題も提起された=10月7日、浦添市てだこホール

 浦添市はこのほど、青少年健全育成の決起大会を開催し、このスローガンを掲げ、子育て環境の正常化を訴えた。このほか、「親子の対話を深め、楽しい家庭作りに努めよう」「夜間外出をなくし、青少年を非行から守ろう」「地域の子どもたちは地域で育てよう」と呼び掛け、正常な子育て環境を守ることに主眼が置かれた大会となった。

 沖縄県では以前から、保護者が子供を連れて居酒屋に出掛けることが“悪習”となっており、“あしき沖縄の文化”に歯止めをかけようと、松本市長が“悪習改善”を提起している。

 2017年の浦添市長選で、松本氏は「深夜の子連れ飲食を制限する」ことを公約の一つに掲げ闘った。18年度には“悪習”に対する市民意識調査を実施し、19年度からは各地で円卓会議を始めた。現在は、市内の飲食店経営者などの意見も募っている段階だ。

キッズファーストの理念を強調する松本哲治浦添市長

キッズファーストの理念を強調する松本哲治浦添市長

 市は市内在住の保護者を対象に意識調査を実施したが、明確な結果が出た。「深夜の子連れ飲食を問題と思うか」との問いには「とても思う」が50・1%、「どちらかといえばそう思う」45・2%で、合わせて95・3%が問題視していることが調査で判明した。その一方で「あまり思わない」3・7%、「全く思わない」0・4%ということも分かった。

 調査では、夜10時~翌朝午前4時までの間を「深夜」と定義。市は昨年5月中旬~9月上旬に市内の未就学児や小学校(2、4、6年)、中学生の子を持つ保護者を対象にアンケートを実施した。

 「実際に深夜の子連れ飲食をしたことがあるか」との質問では「ある」と回答したのは23・1%で、「ない」は76・8%だった。一方で、見たことが「ある」と答えたのは3人に2人に相当する68・3%だった。

 市が深夜の子連れ飲食の制限に取り組む方針については、「大変良い印象を持っている」「ある程度良い印象を持っている」が合わせて90・3%と圧倒的多数を占めた。

 自由記述も集めた。条例賛成意見は「居酒屋ではタバコも吸うし酒も飲む。居酒屋での食事も含めて子供の健康に良くない」「深夜帯は酔っぱらい客の言動も心配」「子供の睡眠時間も減る」など。反対意見としては「夜遅くに子供だけを家に置いておけない事情がある」「一人親や親族がいない人は子供を預けることができない」「条例で強制すべきではない」といった異議が出た。

 深夜の子連れ飲食制限をめぐって、市はこれまで3回の円卓会議を開いた。会議では、住民らがグループに分かれて、市が提示した(1)深夜の子連れ飲食が子供に与える影響(2)子連れ飲食が許される時間帯は何時までか(3)深夜の子連れ飲食への対応方法――などの議題について意見を出し合った。

 住民からは「居酒屋だと受動喫煙が心配」「睡眠不足になる」など子供の健康被害を懸念する声が上がった。「居酒屋は親子のコミュニケーションの場でもある」と“悪習”を擁護する意見もあった。

 松本市長は「条例制定ありきではない」と前置きした上で、「子供を優先しようというキッズファーストの考えの一環として提起した」と指摘。「問題を喚起することで市民または県民的な議論が広がり、本質的なメッセージが伝わることを期待している」と話した。