FC琉球、J1規格のスタジアム建設を目指す

新スタジアムの早期実現がテーマ、那覇市でシンポジウム

 サッカーJリーグは地域の経済、文化、スポーツ、人材育成に活力を与える役割を果たしている。今シーズン、初めてJ2に昇格したFC琉球は現在、J1規格のスタジアム建設を目指しているが、実現には県や那覇市だけでなく県民の後押しが不可欠になる。(沖縄支局・豊田 剛)

Jリーグ関係者、整備計画の大幅な遅れに危機感促す

行政と地域とが一体化した後押しが不可欠

 沖縄県沖縄市をホームとするサッカークラブのFC琉球は2003年に社会人リーグとして創設され、06年に日本サッカーリーグ(JFL)に参戦。14年にJ3リーグ発足に伴い、Jリーグに参入し、18年シーズンはJ3優勝を果たし、19年、J2に昇格した。昨シーズンから今シーズン途中までホームゲーム30試合負けなしというJリーグ記録を打ち立て、8月には元日本代表の小野伸二選手が入団した。

 9月27日には、FC琉球に来シーズンのJ1クラブライセンスが交付され、県民のクラブへの期待はさらに高まった。ただ、それには次の条件が付けられた。

FC琉球、J1規格のスタジアム建設を目指す

J1規格スタジアム整備に向け気勢を上げる小野伸二選手(前列右)ら=11日、沖縄県那覇市の琉球新報ホール

 「2020年シーズンに使用を予定しているスタジアムである『タピック県総ひやごんスタジアム』(県総)は施設基準のうち屋根の基準を充足しておらず、当該基準を充足するための計画、もしくは構想を2019年11月30日までにJリーグクラブライセンス事務局に書面で提出すること」

 10月11日には、「J1規格スタジアムの早期実現に向けて」をテーマとしたシンポジウムが那覇市で開かれ、約400人が参加した。登壇者からは、現在のスタジアム環境に向けて厳しい意見が相次いだ。

 Jリーグクラブライセンス事務局の佐藤仁司マネジャーは、国内に現在、約20のスタジアム整備構想があることを紹介した上で、公共交通機関からのアクセスの良さや客席を覆う屋根の整備が満たすべき要件だと指摘した。

 県総が両方の条件とも満たすことが厳しいだけでなく、新スタジアム整備計画が大幅に遅れている現状に触れ、「県総で将来もJリーグの試合が続けられると思ったら大間違い。危機感を持たないと、J2にもいられなくなる」と計画の加速化を促した。

FC琉球、J1規格のスタジアム建設を目指す

FC琉球の課題について語るJリーグクラブライセンス事務局の佐藤仁司マネジャー(左)とFC琉球の倉林啓士郎会長=11日、沖縄県那覇市の琉球新報ホール

 佐藤氏は、「(FC琉球は)今は仮設のスタジアムで楽しんでいるようなもの。県民は新スタジアム建設を遅らされていて、怒っても良いくらいだ」と発破を掛けた。

 J1公式戦で使うスタジアムは、Jリーグ規定で収容人数が1万5000人以上と定められている。県は那覇市の奥武山(おうのやま)公園に収容規模約2万人のスタジアム建設を計画している。那覇軍港の代償として防衛省の補助金の活用を検討しつつ、一括交付金を使って那覇市所有の土地を県が取得する方針だ。

 最初にスタジアム計画が浮上したのは2011年で、その当時は18年の供用開始を想定していた。翁長県政では、17年度から基本・実施設計を進め、19年度の着工、22年度の供用を目指していた。

 ところがその計画も大幅に遅れ、県がスタジアム整備基本計画を発表したのは昨年8月。供用開始予定が23年にずれ込み、その実現性についても疑問符が付けられている。

 広島市をホームとするサンフレッチェ広島は現在、24年の供用開始に向けてスタジアム整備計画が進められている。同スタジアム総合戦略推進室の信江雅美室長は、その大変さを痛感している一人だ。12年に署名活動を始め、県や市、経済界による協議を重ね、19年にようやく基本方針が完成したという。

 シンポジウムには2人の選手が登壇した。主将の上里一将選手は、「前々からスタジアム計画があることは知っていたが、今やっと現実味が帯びてきた」と述べた。小野選手は、「全国、海外にいる選手に沖縄のスタジアムでプレーしたいと思わせたい」と話し、わくわくするようなスタジアムに期待を寄せた。

 主催者を代表してあいさつしたFC琉球の倉林啓士郎会長は、「玉城知事、スタジアムを造ってください」と県に対して強いイニシアチブを発揮するよう求めたのが印象的だった。

 シンポジウムに参加した40代の男性は、「サンフレッチェ広島は行政と地域が一つになっている印象だが、FC琉球ではそれが明らかに足りないと感じた」と感想を話した。