玉城デニー知事、受注業者と癒着疑惑で窮地に

契約前夜の会食が明らかに、知事選慰労で事業委託か

 沖縄県知事就任から今月4日で1年を迎えた玉城デニー知事が、窮地に立たされている。県発注事業をめぐる癒着疑惑が明るみに出たからだ。野党自民党は議会で疑惑を徹底追及。与党の共産党や社民党などでつくる「オール沖縄」からも玉城氏に反省を求める声が上がり、県庁内部には危機感が募っている。(沖縄支局・豊田 剛)

沖縄県議会で野党自民党が疑惑を徹底追及

「オール沖縄」からも自覚と反省求める声

 玉城知事が、自ら設置した有識者会議の支援業務を受注した団体の関係者と契約前夜に会食していたことが9月30日、県議会の一般質問で明らかになった。野党の自民党は、この会食が県職員倫理規定に違反する疑いや、関係者が知事の政治活動の支援者であることを問題視した。

玉城デニー知事、受注業者と癒着疑惑で窮地に

問題の会食について答弁する玉城デニー知事(手前左)=1日、沖縄県議会(豊田剛撮影)

 県は同会議を開催するに当たり、会場設営、資料作成、委員の日程調整などを担う業務の公募を4月12日に開始した。説明会には6社が参加し、5月10日に締め切ったが、応札があったのは1社だけ。提案上限額ちょうどの2407万7千円での入札だった。

 受注者は、「万国津梁会議設置等支援業務スタートチーム」で、代表者は山形県の「子ども被災者支援基金」の鈴木理恵代表理事。この「基金」は1月に沖縄事務所を設置したばかりの「ペーパーカンパニー」だ。このため、島袋大議員(自民)は、「1社ありきの出来レースだ」と追及。「県内で活動実績のない山形県の団体が代表となっていることに違和感しかない」と問い詰めた。

 また、契約を締結したのは5月24日で、会食はその前日に開かれた。出席者は、玉城知事と県職員3人、基金沖縄事務局長の徳森りま氏、有識者会議の委員2人らだ。徳森氏は知事選で若者のまとめ役を務めた人物である。

 山川典二議員(自民)は一般質問で、これは「知事選で玉城知事を懸命に応援した人に対する慰労ではないか」と詰め寄った。玉城氏は徳森氏から「応援を受けた」ことを認めている。

 さらに、業者を選定した文化観光スポーツ部は「談合ではない」と反論。同部の統括監は「選定結果は知事に報告しなかった」と述べ、前日の会合と契約とは無関係だと強調した。玉城氏も「(会合では)発注のことは全く知らず、話題にもならなかった。あくまでも私的な懇親会だった」と述べたが謝罪の言葉はなかった。

玉城デニー知事、受注業者と癒着疑惑で窮地に

沖縄県議会議員には玉城知事が出席した会食の写真が配布された=1日、沖縄県議会(豊田剛撮影)

 県職員倫理規定は「県民の疑惑や不審を招くような行為の防止」を目的に、利害関係のある関係業者との会食などを禁じている。これについて金城弘昌県総務部長は、「特別職の知事は倫理規程の適用対象ではなく、職員3人も文化観光スポーツ部の所属でない」と説明、いずれも規定に抵触しないとの見解を示した。

 しかし、元県職員は「知事が契約の前日に会合していれば癒着、談合と疑われても仕方がない」と指摘。与党共産党や県庁からも「知事は危機感が薄い」「自覚が欠けている」と反省を促す声が相次いでいる。

 また、「全国トークキャラバン」と銘打った県主催の反基地活動も批判の対象となっている。普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設反対を理解してもらおうと、全国で情報発信するイベントで、今年6月から全国の主要都市で開催している。

 県は今年5月、NPO法人新外交イニシアチブ(ND=猿田佐世代表)と年度末まで1043万円の委託契約をしている。問題となっている「子ども被災者支援基金」の住所とND沖縄支部の住所が同じで、徳森氏と鈴木同基金代表理事は共にNDの理事を務めている。

 自民会派は、「トークキャラバン」にも癒着の可能性があると指摘した。玉城氏を支える屋良朝博衆院議員がNDの評議員を務め、反基地運動に対する寄付からなる辺野古基金からも年間1100万円程度の資金が流れている。照屋守之議員(自民)は一般質問で、「NDは政治団体に等しい。公正公平であるべき県が政治利用し、予算を政治活動に費やすのはおかしい」とただした。

 自民党沖縄県連は、「単なる癒着ではなく玉城知事の公私混同であり職権濫用だ。県議会で特別調査委員会(百条委員会)を設置して真相究明すべきだ」と訴え、与党にも広く協力を求める考えを示している。自民会派は鈴木氏と徳森氏の参考人招致を経済労働委員会に提案し、全会一致で可決された。

 知事の任期を3年残す玉城氏だが、早くも正念場を迎えている。